ワクチン接種開始とその後の展開(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、待望のワクチンがいよいよ生産され、アメリカやイギリスなどの世界各国で接種が始まった。すでに国民の半分近くが接種を受けているイスラエル当局の報告によると、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した「mRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)」は、臨床試験と同程度の効果を表しているようだ。
初めて実用化された「mRNAワクチン」
ワクチンに対する期待は高まりつつあるが、ワクチンは本当に新型コロナウイルスを終息に向かわせるのだろうか。
全人類を危機から救い出すことが期待されている今回のワクチンは、今までのワクチンとは仕組みが異なり、初めて実用化された「mRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)」である。今回のワクチンが世界で初めて接種された昨年12月8日以来、今まで80カ国以上で2億回以上の接種が行われている。現在はファイザー・ビオンテックと米モデルナの2つのワクチンが先行している一方、9種類ほどの新たなmRNAワクチンが医薬品としての承認を待っているようだ。
mRNAワクチンとは
「mRNA(メッセンジャーRNA)」がワクチンとして使用されたのは、新型コロナウイルスが初めてのケースである。体内のDNAには生命にとって重要な情報である、“生命の設計図(遺伝情報)”が記録されており、私たちの体内では、この設計図からコピーされた情報を基にさまざまなタンパク質がつくられている。DNAのコピーがすなわちmRNAであり、体内ではDNAからmRNAがつくられ、さらにそのmRNAからタンパク質がつくられている。
mRNAワクチンはmRNA分子と、これを包む脂質層で構成される。mRNAはウイルスの遺伝情報をもっていて、脂質層はmRNAを保護して細胞内に届ける役割を担う。新型コロナウイルスのmRNAワクチンの場合、ウイルスの表面にあるスパイクタンパク質をつくる遺伝情報をもっている。
すなわち、このmRNAが人の細胞に入るとスパイクタンパク質が生成されて、抗体を産生する 「抗原」として機能するのだ。それと同時に 細胞性免疫応答が誘導され、予防効果を発揮する。一定の時間が経過すると、mRNAは分解され、体内から消失してしまう。今回、ワクチンの製造に利用されたmRNAを活用するコンセプトは、1990年代にはすでにあったが、生体内ですぐに分解されたり、自然免疫を誘導したりする性質があるので、実用化されなかった。しかし、近年、ドラッグデリバリーシステム(DDS)など、既存の課題を解決できるブレークスルーがあり、新型コロナウイルスのワクチン開発の成功につながった。
mRNAワクチンの特徴
mRNAワクチンの1つ目の特徴は、ウイルスの変異が発生しても、素早く対応できることである。病原体の遺伝情報が把握できれば、短期間で比較的簡単にmRNAを設計することが可能であるという。実際に、新型コロナウイルスのゲノム配列が20年1月10日に公開された後、モデルナが臨床試験の第1相試験に必要なワクチンをつくるまで、わずか25日しか、かからなかった。加えて、1年以内という前例のないスピードで実用化にこぎつけた。
mRNAワクチンの2つ目の特徴は、安全性である。mRNAはもともと私たちの体内にあるもので、それ自体には毒性がない。製造過程で細胞を使う代わりに精製された酵素を使っているが、不純物が入る危険性もない。そのため、今までのワクチンよりも安全だという評価を受けている。
(つづく)
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