三菱自動車がまたもや不正、日本の製造業が溶解していく(前)
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三菱自動車工業(株)(以下、三菱自動車)がまたやらかした。2000年代に2度もリコール隠しなどの不祥事で経営危機に陥った三菱自動車が、今度は燃費試験で不正を働いていた。重電の名門(株)東芝は、不正会計で巨額な赤字を計上し経営危機に陥った。液晶テレビで一時代を築いたシャープ(株)は台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された。日本の製造業が溶解していていく。何が起きているのか――。その要因を解明する。
隠蔽体質は「大三菱」の遺伝子だ
「三菱の体質はちっとも変わっていない」。燃費データ不正操作問題の報道を目にしたときの感想である。
三菱自動車は、不祥事のデパートみたいなものだ。2000年にリコール隠し問題が発覚し、その後も02年にトラックタイヤ脱輪による母子3人死傷事故、04年にはまたしてもリコール隠しが発覚した。その都度、指摘されてきたのが、度し難いまでの隠蔽体質だ。明治時代に政商から出発し財閥を形成した三菱は、政府から軍備を一手に引き受ける軍需産業として巨大化した。有名な零戦は三菱製だ。
「三菱は国家なり」。戦後、三菱重工業(株)(以下、三菱重工)は、防衛産業の雄として君臨した。明治、大正、昭和、平成の4時代にわたり、国家とともに歩んできたというのが三菱のプライドである。スリーダイヤは、大三菱が誇るシンボルマークだ。国家相手のビジネスだから、情報は徹底的に秘匿した。すべての情報を隠蔽するという三菱重工のDNA(遺伝子)をしっかり引き継いでいるのが、重工の嫡子にあたる三菱自動車だ。
「三菱グループの天皇」の暴言
「この親にしてこの子あり」。妙に納得できる記事を目にした。
『週刊新潮』(16年5月5日・12日ゴールデンウィーク特大号)の『三菱自動車「相川哲郎」社長の実父「三菱グループの天皇」かく語りき」に掲載された三菱重工相談役、相川賢太郎氏(88)のインタビュー記事だ。「燃費データ不正操作問題」に揺れる三菱自動車の相川哲郎社長(62)の実父である。相川賢太郎氏は三菱重工の社長を1989年から3期6年、会長を2期4年務め、今も三菱グループ全体に睨みをきかせているという。
第2金曜日には,三菱グループの主要29社の社長や会長たちが集まる「金曜会」というものがあり、相川氏は、その世話人代表を96年から99年まで務めた。世が世であれば、三菱財閥の総帥である。三菱御三家である三菱重工、(株)三菱東京UFJ銀行、三菱商事(株)の3社が金曜会を仕切るが、三菱財閥の家長の役割を担っているのが三菱重工だ。三菱重工のドンである相川賢太郎氏は,「三菱グループの天皇」の異名で呼ばれる。
その賢太郎氏はインタビューで、こう語っている。
〈あれ(今回の不正問題=筆者注)はコマーシャル(カタログなどに記された公表燃費性能=筆者注)だから。効くか効かないのか分からないけれど、多少効けばいいというような気持ちが薬屋にあるのと同じでね。自動車も“まあ(リッター)30キロくらい走れば良いんじゃなかろうか”という軽い気持ちで出したんじゃないか。(中略)買うほうもね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買っているじゃないわけ〉
燃費データ不正は、軽い気持ちでやったことだ、と言い放ったのだ。「三菱の傲り」と消費者の反発を招くとは考えていない。三菱グループ首脳たちの苦虫をかみつぶした顔が目に浮かぶが、筆者は「やっぱり」と納得できた。大三菱は、消費者なんか眼中にないからだ。
(つづく)
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