コロナウィルスより恐ろしい農薬や殺虫剤の大量散布
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。今回は、2021年4月23日付の記事を紹介する。
世界的に新型コロナウィルスやその変異種が猛威を振るっている。そうした感染症の拡散に関するシミュレーションを行い、地球規模での備えをいち早く訴え、ワクチン開発を行う製薬メーカーに資金を投入してきたのがビル・ゲイツ氏である。ファイザーやモデルナの最大の株主はゲイツ氏に他ならない。世界保健機関(WHO)に対する個人献金額でもほかを圧倒している。
そんな世界の大富豪が「コロナの次に人類を襲う危機」への警鐘を鳴らしていることは日本ではあまり知られていない。それは「食糧危機」である。世界人口は増える一方であり、このまま行けば現在の80憶が100億人に膨れ上がるのは時間の問題と見られる。ゲイツ氏は以前から「このまま人口増加が続けば、食糧争奪戦争に発展し、人類全体が危機的状況に陥る」と訴えていた。そのため、ノーベル平和賞を受賞したキッシンジャー元国務長官らと連携して、「世界人口の15から20%の削減計画」にも関与するようになった。
うがった見方をすれば、現在進行形のコロナウィルスはまさに「人口抑制効果」があるわけで、ワクチン開発に資金を投入するというポーズを見せながら、実は「増え続ける世界人口を減らすために感染力の高い変異種までも次々と準備していたのではないか」といった疑念の声も聞かれる有り様である。
いずれにしても、日本では食品ロスが社会問題化しているほど、飽食の時代、モノ余り現象が出現して久しい。日本の食糧自給率はカロリーベースで40%ほど。海外からの食糧輸入に対する依存度がこれほど高い国も珍しい。問題は世界的に農地が減少していることだ。地球温暖化の影響で農地が水不足で干上がり、生産ができなくなっている地域が急増している。
加えて、農薬や殺虫剤の大規模な使用によって、土壌や水源が汚染され、農作物や家畜に悪影響がおよぶような事例が一般化するようになってきた。これでは食糧生産も先細るとともに、人への健康被害が懸念されるばかりである。農業、畜産大国であるオーストラリアの研究者による最新の調査結果には愕然とさせられる。
その報告によれば、世界168カ国の農地で100種類以上の化学肥料や農薬、殺虫剤が使用されていることが判明した。問題は使用限度を超えて大量に散布されていることである。実に農地の64%において、人体や環境に悪影響が想定される限度を超えての使用が確認されたというのである。しかも、全体の3分の1の農地では人体への被害が想定される限度の1000倍もの殺虫剤が投下されていたという。
具体的にはとくにアジア地域での農薬や殺虫剤の過剰使用が顕著であった。中国、日本、マレーシア、フィリピンが危険なレベルまで達しているとのこと。とはいえ、最も深刻な状況は中国であり、190万平方マイルにおよぶ危険な農薬使用地域の半分以上が中国であった。こうした過剰な農薬や殺虫剤を使用した農地から収穫された食材を体内に取り込むことでパーキンソン病や喘息、はたまたガンを誘発することが明らかになっている。
もちろん、こうした危険な農薬使用が確認できたのはアジアに限らない。ヨーロッパでもロシア、ウクライナ、スペインなどの農地の60%以上で人体への有害レベルを超えるほどの農薬散布が繰り返えされている。世界全体で見れば、ほぼ31%の農地が「ハイリスク」の認定される有り様である。
また、水源地の汚染状況を見れば、南アフリカ、インド、オーストラリア、アルゼンチンのリスクが高くなっているが、中国が最悪レベルのままのようだ。最も深刻な課題は、こうした公害のリスクを回避するため、農薬や殺虫剤の散布を止め、有機の自然農法への転換を図った場合でも、20年以上の時間が経過しても残留農薬がゼロには至らないという点である。このことはスイスの専門家による研究調査によって明らかにされている。こうした残留農薬は少量であったとしても体内に取り込まれると、人間の再生能力を低下させたり、免疫力を破壊することになるわけで、長期的に人類の生存を脅かすことは間違いない。
カナダのモントリオール大学の最新研究によれば、土壌にしみ込んだ農薬や殺虫剤がリン酸化を促し、周辺の水源を人体に有害なレベルまで汚染することになるという。そして、こうした化学物質の散布を中止したとしても、土壌や水源が元の安全なレベルにまで回復するには少なくとも100年、場合によっては2000年もの時間が必要になるとのこと。それだけ一度汚染が広がれば、取り返しがつかないというわけだ。
5年前から国連では「2030年までに世界から飢餓をなくす」とのキャンペーンを展開している。2019年の時点で、6憶9,000万人が食糧不足に苦しみ、20億人が安全で栄養価の高い食材を十分に摂取できていない。これは新型コロナウィルスが発生する前の話である。今や新たに1億3,000万人が飢餓人口に追加されることになった。にもかかわらず、世界からは農地の31%が農薬等の影響で食糧生産ができなくなりつつある。これほど人類生存にかかわる危機はないだろう。
そんな中、ゲイツ氏は人工食肉ビジネスに力を入れ始めた。大豆など穀物から人工的に食肉を製造する「インポッシブル・フーズ」への投資を拡大している。こうした人工食肉の売上は20年には前年比で45%も拡大。同じく人工牛乳も20%の売り上げ増を記録している。農地の汚染が進む一方で、人工的な食材が市場をじわじわと押さえ始めているようだ。
日本人の食卓にも人工的に加工された食材が増え始めている。とはいえ、肝心の穀物や野菜が汚染されたままでは人体への悪影響は増す一方であろう。残念ながら、拡大するコロナウィルスに向き合う際にも欠かせない免疫力や抵抗力も育まれない。今こそ自然に回帰する有機農業を強力に推進する必要がある。
著者:浜田和幸
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