『日本弓道について』(3)竹矢について(前)
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今年5月に弓道の写真集を出版した。父を師として、42歳から弓を始め、弓歴は30年を過ぎた。弓を初めた頃から30年かけて撮影してきた、名人といわれる先生、弓道大会、弓にまつわる演武や祭などを載せた写真集だ。長年、弓を続けてきた者として、弓についてつづる。
竹矢とは
竹矢は、矢竹を乾燥させて油を抜いたものを、炭火などでさらに熱を加えてしごき、まっすぐにしてつくられる。矢の竹の部分である篦(の)の材料となる竹には4本の節があり、鏃(やじり)に近い方から、射付節(いつけぶし)、箆中節(のなかぶし)、袖振節(そでふりぶし)、羽中節(はなかぶし)という名前が付いている。羽中節は名前の通り、羽のなかにあり、それぞれの節は180度回転したように付いている。
道場では、弓の握り(グリップ)を左手、2本の矢の射付け節を右手でもち、ともに腰に据えて入場する。射位(弓を引く位置)に立って練習する時も、同様である。
矢はどうやってつくっているの?
矢をつくる職人のことを矢師(やし)という。成長3年目の1,000本〜3,000本の竹を竹林から鎌で切り出し束にして、酒蔵やビルの屋上などで天日干しを1年間行う。
天日干しした竹のなかから出来の良い竹を選び、一定の長さに切り、炭火で炙り、竹の油抜きをする。曲がった竹をまっすぐにすることを「矯(ため)を直す」という。竹を炭火に入れて矯め木の道具で少しずつ矯正して、竹をまっすぐにしていく。
太さや節が合う、まっすぐになった竹を4本、または6本を1セットとする。良い矢の篦(の)は4本または6本とも竹の節がほぼ揃っており、竹の復元力(しなり)がよいため、値段も高価になる。射手が、弓の強さに合わせて竹の太さを選び、身長により矢の長さ(矢尺という)を選ぶ。
矢の長さを決める方法
身長に合わせて矢の長さを決める。矢を持ち、左を向いて左手を伸ばして、首の中心から左手の開いた手先に指2本を加えた長さが基準となる。初心者は安全のため、少し長めにする。鏃が矢を引き込んで、弓の内に入るため、離すときに弓に当たり暴発する危険があるためだ。弓は飛び道具のため、安全第一で練習する。
矢師の話では、地権者と契約した上で、野や山で冬に竹を刈るが、猪と間違われて猟師に鉄砲を撃たれたり、山芋堀の穴に落ちたこともあるという。矢竹はヘラブナ釣りなどの釣り竿の材料となっている。
矢に羽をつける
出来上がった篦(竹のこと)に羽をつけていく。矢をまっすぐ飛ばすために最も効率の良い3枚羽の配列となっている。
羽の材料は猛禽類(主に鷹)を使っていたが、現在は自然保護のためのワシントン条約で猛禽類の羽の使用は禁止されているため、家畜の鳥の羽(ガチョウなど)が使用されている。
羽の付け根は、射手側の内を向いているものと、外を向いているものがあり、3枚の羽にもそれぞれ名前が付いている。上部が走り羽、弓に擦れる手前が弓摺羽(ゆずりは)、外側が外掛羽(そとがけば)だ。内と外の羽を1セットとして、最初に射るのを甲矢(はや)、次に射るのを乙矢(おとや)と呼ぶ。それぞれ羽の向きが違うため、甲矢は左に回転、乙矢は右に回転して飛んでいく。
近的では、的までの距離は28mで、放たれた矢は多少しなって3回転ほどして、それを復元しようという力が働き、的に向かって飛んでいく。ゴルフや野球で、クラブやバットで叩かれた瞬間に丸いボールが楕円形になり、元のかたちに戻ろうとして飛んでいくのと同じ原理だ。
弓を押す力と弦を引く力のバランスが異なると、矢は左右に、または縦にずれて飛んでいく。線を描くように飛んでいくのが理想であるが、矢が大きくずれて飛ぶのを「矢色が出る」という。実際には、色は出ないが、昔の人は粋な名前を付けたものだ。
羽をボンドで篦に付け終わった後、羽の付け根に糸を巻いて仕上げる。色は白が主流であるが、ほかの色も使っている。これを矧(はぎ)と呼び、根本を末矧(うらはぎ)、付け根を末矧(もとはぎ)という。
(つづく)
福岡地区弓道連盟会員
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