仮想通貨とクレジットカード、どちらが決済市場を取るのか(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
決済とは、相手から提供された商品やサービスに対して、お金を払ってそれらを受け取る行為のことであり、「支払いを済ませる」という意味をもつ。決済方法は時代とともに変化してきたが、なかでもクレジットカード決済は手元に現金がなくても後払いで買物ができるため、決済市場を大きく成長させるきっかけをつくった。一方、仮想通貨も送金や支払いの手段として徐々に普及しつつあり、今後、仮想通貨とクレジットカードのどちらが決済市場を取るのかについて、注目が集まっている。
仮想通貨決済の最近動向
世界的な決済サービス企業であるペイパル(PayPal)は5月30日、「仮想通貨決済(Checkout with Crypto)」のサービスを開始した。米国内のペイパルのユーザーであれば、ビットコインやイーサリアムなど、4つの主要仮想通貨でのオンライン決済はいうまでもなく、リアル店舗でも決済できるようにしたサービスである。ペイパルのユーザーは全世界で3億7,700万人であるため、ペイパルは全世界の加盟店2,900万店で仮想通貨決済ができるようになるだろうと自信をのぞかせた。
韓国のフィンテック企業であるダナルは、今年の上半期中に韓国内の7万店舗において、ビットコインで決済できるようにすると明らかにした。ダナルは韓国のモバイル決済市場でトップシェア(38%)を占めており、ダナルが発行しているペイコインのユーザーは、ここ3カ月間で80万名から130万名に増加している。ダナルは現在、加盟店数が7万社であるが、今年中に20万店舗が追加されるだろうと予測した。
このように、仮想通貨はウォレットをインストールすると、取引所などで売買せずに決済手段として使うことができるものであり、日常生活で決済に利用される場面が少しずつ増えている。しかし、今までの決済市場を牛耳っていたクレジットカード会社も、手をこまねいているわけではない。VISA(ビザ)の加盟店数は7,000万店舗、Mastercard(マスターカード)の加盟店数は5,300万店舗と、ペイパルの加盟店数の2倍以上である。クレジットカード会社も、利益の上がる決済市場を取られないように仮想通貨決済などの導入を真剣に検討している。
決済市場の歩み
これまでの決済市場の歩みを振り返ると、第1世代の決済方法が紙幣とすると、第2世代はクレジットカード、第3世代はQRコードなどのモバイル決済、第4世代は仮想通貨決済だ。第3世代までの決済方法の一部は国境を越えた決済には対応できないが、仮想通貨は海外での決済も対応できることが大きな特徴であり、世界のどの場所にでも安く、早く送金できるため、重宝されている。一方、銀行口座と紐づけたクレジットカードは、世界の半分の人口は銀行口座を持っていないこと、加盟店手数料が高いことから、普及させる上で限界がある。
ビットコインなどの仮想通貨にも、値動きが激しいため支払い手段としては適切ではないという弱点もあるが、価格変動が少なくなるよう設計された通貨であるステーブルコインを決済で介させるなどの解決方法はある。自国の市場だけに決済が留まらない今では、海外市場での決済に活用できる仮想通貨決済に注目が集まるのは当然であろう。
今後の展望
今回の新型コロナウイルスはデジタル化を加速させており、リアル店舗は衰退してオンライン店舗の売上高の比重が高くなりつつある。加えて、人口の減少や高齢化を考えると、海外市場の開拓は必須となってくる。
たとえば、東南アジアで物を販売する場合にクレジットカード決済を考えているならば、自ずと限界がある。韓国のIT大手であるネイバーやカカオの成長が期待されているのは、仮想通貨の発行などに力を入れており、海外市場を獲得できると考えられているためだ。現在の決済方法の対策を立てて改善しない限り、市場開拓はあり得ないのだ。
既存クレジットカード会社がこれからも決済市場のシェアを維持できるのか、それとも仮想通貨が新しく市場を獲得するのか、その行方に注目したい。
(了)
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