2024年12月23日( 月 )

【IR福岡誘致開発特別連載41】IR横浜はセガサミーとゲンティンで決まり

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 横浜市行政が11日、今夏予定のRFP(民間事業者の公募の具体的な提案書提出に関わる資格審査)の最終選抜予定の2社を公に告知した。

 すでに公表されている1社は世界的に著名な香港(中国)に本社がある中華系の新濠国際発展(メルコ・インターナショナル・ディベロップメント)である。オーナーは伝説のマカオのカジノ王、故スタンレー・ホー氏の実子ローレンス・ホー氏で、一族郎党は中国共産党とは切っても切れない歴史があるため、日米経済安全保障上の理由などにより、チャンスは一切ない。

 もう1社は、これまでセガサミーホールディングス(株)としか公表されていなかったが、具体的に告知された。それはセガサミーのほか、シンガポールに本社を置く ゲンティン・シンガポール、我が国のスーパーゼネコンである鹿島建設(株)、(株)竹中工務店、(株)大林組、大手の総合警備保障(株)(ALSOK)の6社による組織だ。本件開発事業の「核」となる事業母体が出現したことにより、これで決まりと言えそうだ。

 以前から、重ねて説明していることが、また予想通りとなった。もう、今夏の横浜市行政による「公募」を実行する必要もなく(公募であるため、型通りには実行するだろう)、このセガサミーグループで確定である。しかし、今回も各社マスコミは、今後は上記の2社による戦いになるだろうという表向きだけの誤った報道に終始している。

 これは、菅政権が前安倍政権からのシナリオを引き継いだにすぎず、予定通りの戦略である。ただし、予定通りにいっていないことが1つだけある。それは管轄行政の不手際による米国ラスベガス・サンズやウィン・リゾーツのコロナ禍前の撤退だ。

 安倍前首相とその当時の政権は、セガサミーHD里見治会長と過去からの深いつながりをもっている。それは永田町でも伝説になっているが、2013年に行われた、ある結婚披露宴で明らかになっている。披露宴の新郎は経産省の若手キャリア、新婦は里見会長の令嬢である。この披露宴が、より注目されたのは、その豪華な顔ぶれにある。安倍首相(当時)、小泉元首相、森喜朗元首相の3人が顔をそろえていたのだ。

 その後、新郎の鈴木隼人氏(東京ブロック比例代表)は、経産省キャリアから翌14年には衆議院議員に転身した。さらに、鈴木氏は現在、自民党のカジノ議連の幹部でもある。これらは義父・里見会長の手腕と戦略による華々しい立身出世の経緯なのだ。

 IR大阪はよく知られているように、オリックス・宮内オーナーと提携した米国MGMの1社のみであり、昨年の RFP参加者募集時にほかの候補者すべてが自主撤退したことは、記憶に新しい。これは最初から仕込まれていて、「勝てない」と判断した上での決断だったのだ。

 今回のセガサミーHDも同様であり、最初から練りに練って戦略を企てて組織組成をした里見会長の高い手腕によるものだ。

 この連載記事では、本件IR事業開発は、民間で先行するオーナー企業との連携しか可能性はないと言い切ってきた。それは「安倍・トランプ密約」からスタートして、事前に里見会長にも打診しているはずの大都市専用の「法の建て付け」である。

 そのため、後背地人口の少ない地方都市ではIRの誘致開発は不可能だ。また、表向きは管轄行政による「公募」というかたちであるが、マスコミ各社が報道してきたような熾烈な競争入札が起こるはずはない。大阪も横浜も民間企業が水面下で事前に準備してきたものだ。

 すなわち、これだけ巨大で巨額な開発事業では、我が国の大手企業も、地方財界企業も、いずれかの1社の旗の下に必ずまとまり、護送船団方式となって行動するということである。しかし、IR横浜はいまだ安心できない。来たる8月の横浜市長選で現職の林市長が再選されることがターニングポイントとなるであろう。コロナ禍でのオリンピック問題などで今後どう転ぶのだろうか。選挙は水ものであり、予測がつかない。

 これで、今後のIR福岡がますます注目されてくるだろう。米国IR企業との連携誘致に対して、我が国のいずれかの大手オーナー企業の出現、地元財界では先日の九州IR推進協議会(KIRK、麻生泰会長)の発足により、弾みが付くことは間違いない。一方、IR和歌山やIR長崎では、この開発事業母体となる我が国の大手企業との連携による組織組成はできていない。それは、大手各社が地方では採算性はないと理解しているためである。

【青木 義彦】

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