ストラテジーブレティン(284号)なぜ、大きな政府が必然的なのか~その投資への含意(4)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2021年7月13日付の記事を紹介。
バイデン政権が登場し、大きな政府への流れが決定的になった。この急旋回は、コロナが原因となって起きたものではなく、コロナは単にきっかけに過ぎない。底流で進行していたレジーム転換が一気に表面化したものと考えられるので、この流れは不可逆的なものであろう。賢い政府が今ほど求められるときはない。
(2)大きな政府を必然とする要因、2.潤沢な貯蓄と需要不足(つづき)
金融・財政レジームとは昆虫の殻に例えることができよう。技術と生産性向上にともなう経済実態の拡大に、古い殻である旧金融・財政レジームが対応できなくなると、新しいレジームが登場する。金本位制に縛られた通貨増発の制約が29年からの世界大恐慌を引き起こし、管理通貨制度への変態が余儀なくされた。また80年前後の米国不況は、ドル金交換停止によって可能となった世界通貨ドルの増刷(レーガノミクス)で回復し、それが新ブレトンウッズ体制(全世界管理通貨時代)に帰結した。
米国の歴史を振り返れば、米国経済の盛衰、NYダウ工業株の100年の趨勢が、金融レジーム(=紙幣増刷メカニズム)によって変転してきたことが明白である。図表10は実質NYダウ(NYダウを物価指数で除したもの)であり、購買力としての株式価値を示している。過去100年間で3つの大幅な上昇の波があり、今第4番目の上昇の唯中にある。
3つの波とは
(1)1910~20年代(金本位制の下での古典的自由主義体制下での上昇)
(2)50~60年代(各国管理通貨制度→国内紙幣増刷体制の下でのケインズ経済体制下での上昇)
(3)80~90年代(世界管理通貨制度→ドル散布体制の下でのグローバル新自由主義体制下での上昇)である。そして今、
(4)2010年から新たな上昇が始まっている。それはQE(量的金融緩和)という紙幣発行の新しい仕組み、株式などの市場の許容度に即した通貨発行手段を用いた、市場本位制度とも考え得るものである。それは政府部門による需要創造を推進力とする新グローバル・ケインズ体制とでもいえる仕組みになっていくのではないか。FTPL(物価水準の財政理論=シムズ理論)、MMT(Modern Monetary Theory)などの財政出動を正当化する理論が台頭しているのは、まさしく金融緩和と財政政策の2つのエンジンによる需要創造が必須・適切な時代の到来を示唆していると考えられる。日本の初期のアベノミクスやトランプ氏によって財政金融総動員のマクロ政策が開始されたが、バイデン氏とパウウェルFRB議長による財政金融一体緩和政策は「新ケインズ政策」を全面展開させるものといえる。(つづく)
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