【倒産を追う】アイリンク・アソシエイツ破産、目移りと他者利用優先主義で行き詰った井野和弘会長(3)
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生死の境から生還
井野氏は多趣味な人物であり、ゴルフの腕前はシングルでコンペでの優勝は数えきれない。ダイビングも趣味の1つであり、井野氏はある日、ダイビング中に落雷に遭い、心肺停止状態となったことがある。このような事態に見舞われれば「仏さん」になったとしても不思議ではなかった。幸いに迅速な応急処置が功を奏し、奇跡的に復活を遂げた(事業家としての復活ではない)。
井野氏は最先端の心臓外科手術を受け、一命を取り留めた。現在、人工心臓を植え込んでおり、障害者手帳を交付されている。しかし、飲酒を控えることもなく、引き続きゴルフコンペを荒らし回っている。つまり、従来通りの生活スタイルを取り戻したのである。本人にはこれだけの生命力があるにもかかわらず、会社は再生させられず失敗に終わった。まさに人生の皮肉というべきか。
事業の再起が叶わなかったのには、経営者としての原点が広告業にあったことが要因にあげられよう。広告業はクライアントに対して販売を促進するコンサルタントを行う事業であり、自身で事業(実業)を組み立てることをあまり経験していない。井野氏に仕事を依頼したことのある以前のクライアントは、井野氏について「予算書を提出してきたので前払いで応じたが、後で点検すると外注先にすべて丸投げしていたことが分かった。人の褌で立ち振る舞うのであれば、利を得るには至らない」と語る。
本人の弁「すべてコロナ蔓延によるもの」
ついに井野会長から証言を得られたので、以下にまとめる。
(1)29歳で起業して一度、失敗した苦い経験がある。結論として早く資金回収ができる商売を行うことと事業多角化の必要性を痛感していた。
(2)水素水の通販販売を手掛けたものの、ブームが一挙に終焉したことにより行き詰まった。
(3)健康食品の通販事業やコールセンター事業部門などは子息に託しており、ほとんど口出ししなかった。自身は時流を読んで現金商売に徹し、(1)飲食店事業、(2)ホテル事業に注力した。ところがコロナ禍でこの2つの事業は大きな被害を被り、インバウンド事業は文字通り木っ端微塵となってしまった。これでは売上の見込みが立たず失敗するのは明白である。
井野氏はこのことが事業失敗の要因であると語った。「これらの失敗は自身に時流を読む力がなかったため」と反省するべきであろう。
行き詰まった要因についての現在の理解は上記の通りであるとして、もう一歩踏み込んだ総括が欲しいところである。時流を読むことを強調するのは自由だが、自身が目移りしてきたことに起因する失敗を総括しないことには、今後も同じことを繰り返すであろう。
イタリアンレストラン事業の失敗が資金繰りを圧迫させた。現状を打破するために現金商売に傾倒していった現実から目を逸らしていては事業を継続できるわけがない。
地獄から生還した井野氏は精神的にはタフな男であり、「挫けずに事業再生へ挑戦する」と意気軒昂である。
(了)
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