2024年11月17日( 日 )

小売こぼれ話(2)業態という選択肢(後)

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生鮮食品をどう扱うか

鮮魚コーナー イメージ 大型のディスカウント店は客数も買い上げ単価も、通常型のスーパーマーケットの比ではない。価格と品ぞろえで客数と商圏が2倍になれば売上は4倍になる。ディスカウント店が安く売れるのはそのような構造があるからだ。

 福岡県内には経費率10%を切る地場ディスカウンターがある。コストコ並みの経費率だ。そんな企業も坪あたりの売上が通常のスーパーマーケット並みになれば、経費率はたちまち20%になる。

 マックスバリューなどの通常型のスーパーマーケットの経費率は23%前後。だから、それ以上の粗利益率をとらなければ赤字になる。コスモスなどのドラッグストアの経費率は14~15%。このため、18%程度の粗利益を確保すれば経常利益率は4%となり、小売業としては十分な数値だ。

 経費率の差は、施設全体への投資と日々の営業コストで決まる。日々のコストで大きいのはやはり人件費だ。とくに生鮮食品はそのコストが大きい。だから安く売るには生鮮、とくに手間がかかりロスの多い青果と鮮魚をどうするかということになる。

 利益の出ない生鮮をどうするかは、通常型のスーパーマーケットにとって小さくない問題だ。利益の出ない部門は極力小さくするか、なくすか。それが業界の常識だが、生活必需品販売のスーパーマーケットではなくすという選択肢はない。だからアイテムを絞り、店舗での作業を減らすという手段を選択する。

 店舗から遠い加工センターで事前の数量予測による発注はおのずと消極的にならざるを得ない。だから貧弱な生鮮売り場になる。お客から見てはなはだ魅力のない売り場だ。結果として坪あたりの売上は小さくなり、店舗売上がそれに連動する。通常型の坪あたりの売上は概ね300万円に満たない。これは販売だけで収支が合わないレベルの売上だ。このため、家賃収入など間接の利益がなければ、まともな利益を手にできない。

 一方、多くのディスカウンターは生鮮を外部委託し、ドラッグストアは加工食品的な扱いで外部から仕入れている。

 もう1つのやり方は、あえて非効率の生鮮を逆手に取ること。九州でその手法を採用している代表的な企業は、北九州に本拠を置くハローデイだ。

 同社は手間のかかる生鮮をあえて主力に据え、顧客の感動に訴えるという手法をとった。人間は価値の基準の多くを「見た目」に置く。ハローデイが考えたのは、お客の期待を大きく上回る「見た目と質」の提供だ。

 その結果、通常型のスーパーマーケットに比べて買い上げ点数と単価が変化。いずれも通常型に比べて20%ほど高くなり、1店舗あたりの売上は通常型の1.5倍を超えるようになる。生鮮強化による商圏の拡大と買い上げ単価の上昇効果は、ディスカウンターの構造と似ている。その違いは価格をとるか、質をとるかだ。

 これに今後はオンラインという異次元の競争者が加わる。従来型がこの新しい競争の構図にどうかかわるかが、今後の注目点でもある。

(了)

【神戸 彲】

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