【経営者事業魂の明暗(3)】梁山泊(博多)メンバーの現在地 トラストHD渡邉氏、代表辞任の背景(中)
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福岡で成功を収めた梁山泊(博多)のメンバーたち。今も経営者として辣腕を振るう者、悠々自適の日々を送る者、そして企業トップを辞任せざるを得なかった者も。30年前に野望を語り合った兵(つわもの)たちの現在地とは?
最高の成功者は新日本製薬の山田氏
結論からいえば、現時点での山田氏(1960年生まれ)の個人・関連企業資産は、キューサイの創業者・長谷川氏が握った500億円を超えたと考えられる。どの世界でも先輩の評価を称えるだけでは話にならない。超えなければ真の評価は得られない。筆者は7年前に、短期間で山田氏が先輩を追い抜くと考えられる要因を推測していた。それは、同氏の見事な驚くべき錬金術である。
筆者はNet IB News(2014年10月27日)で「12期で株主資本160億円積み上げた男」と題したレポートを発表した。当時から子会社・新日本製薬の業績は好調だった。持株会社は(株)樹。新日本製薬は常に10億円以上の当期純利益を上げ、大半を持株会社の樹に配当で回す。この配当金をすべて蓄積していく。その結果、12期で株主資本168億円を積み上げた。当時、筆者は「福岡一、いや九州一の資産づくりの天才的才覚」と表現した。
山田氏の凄さは、「無駄遣いしない、至らないこと(社会貢献)には触手しない、金銭には厳しい。余剰資金を無駄にはしない」ことに徹していることだ。儲かる不動産物件にはいち早く投資し、確実な資産形成に励んでいる。14年10月に山田氏の錬金術を発表して以降の7年間で、どのくらい資産を膨張させたのかは不明だ。9年後の70歳になれば、いったいどれほどの資産を握るのだろうか。福岡で有数の資産家になることは間違いないといえる。
快進撃はそれだけではとどまらない。新日本製薬は19年、東証マザーズに上場をはたした。同社の発行株の80%前後は関係者が押さえている。山田氏の長年の夢であった上場企業のオーナーになったのである。これで社会的ステータスを握りしめた。今は令和の時代だが、「山田英二郎氏は平成時代に福岡で一番資産を肥やした経営者」と評価してよいだろう。同氏の現在の関心事は、中洲の飲食ビルを購入することではないだろうか。どうであれ、梁山泊メンバーが認定する成功の第一人者である。
不動産業に戻り悠々自適の井氏
次の成功者は、ウェルホールディングスの代表取締役・井康彦氏(1958年生まれ)である。井氏はさまざまな職を経て不動産業に従事していたが、梁山泊メンバーと議論するなかで、「次のビジネスは通販事業である。この業種で勝負すべき」と察知し、起業したかどうかは不明。井氏は90年に(株)エバーライフ(当時は(有)エバ―ライフ)を設立。健康食品業界で独特の地位を築き、売上高200億円台まで伸ばした。井氏に刺激と成功のヒントを与えたのが、キューサイの長谷川氏であろう。
2008年2月に(株)エバーライフ・ホールディングス(東京都港区、チェン・シム・タン代表=当時)に売却。井氏は235億円といわれる売却益を取得したようだ。一時はハワイで趣味のサーフィンに専念していたといわれている。最近は福岡滞在が多いようだ。手持ちの潤沢な資金を不動産に回している。利回りの良い物件は自社購入をはたし、マンション販売や販売代理業務も手がける。従業員も少数精鋭で、気苦労はない。山田氏のような派手さはないが、着実に成功の基盤を一族に事業継承する手を打っている。2番手の成功者との評価を受ける資格がある。
(つづく)
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