海洋・海底資源の開発で世界をリードする日本 “海からの贈り物”に感謝!(後)
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国際未来科学研究所 代表 浜田 和幸 氏
国際規模で広がる種子争奪戦
我々人類が誕生したといわれる海。青い地球といわれる所以の海洋。東シナ海や南シナ海が緊張と対立の海になりつつあることを思えば、「海からの恵み」に感謝しつつ、その資源力の活用に大いなる知恵を働かせ、国際的な共同開発の成功事例にすべきではないか。
実は、新たな変異種が登場して感染症の拡大が広がるなか、我々の食生活を支える農業を根本から激変させるような動きも進んでいる。穀物、野菜、果物など、食材を育てるには種(タネ)が勝負のカギとなるが、そのタネの運命が危うくなっているのである。
何が危険かといえば、タネを開発した育成者の権利(育成者権)の保護が強化されるという動きが加速している点である。1991年、「植物の新品種の保護に関する国際条約」(UPOV)が改正され、育成者権が知的財産権の1つとして認定されるようになった。つまり感染症用のワクチンの開発者に知的特許や財産権が認められるのと同じように、タネについてもその品種に関する育成者権が与えられるというわけだ。
一見、問題がないように聞こえるだろうが、この育成者権の付与には大きな落とし穴が隠されている。たとえば、日本では「農民の権利」として、自分が育てた作物に実ったタネを自分で採って植えるという「自家採種、自家増殖」の自由が認められていた。そのため、農林水産省では「登録品種」という枠組みのなかで育成者権の保護に努めてきた。
ところが、そうした農家の権利を奪うような法改正が行われようとしているのである。ここには種子の市場をコントロールしている世界的な種子メーカーの思惑が隠されている。現在、世界の種子マーケットはグローバル企業3社が牛耳っているといっても過言ではない。具体的には、「バイエル・モンサント」「ダウ・デュポン」「シンジェンタ・中国科工集団」である。彼らが世界の種子市場のなんと70%を押さえている。
彼らにとっては、農家の自家採種はビジネス上の邪魔者でしかない。農家が自分でタネを採種して、自分で増殖してしまえば、自分たちのタネが売れなくなってしまう。今でも日本の農家は、農協などを通じて海外製の農薬や化学肥料を大量に購入させられている。しかし、それだけではなく今後は先祖代々育まれてきた日本生まれのタネが自由に使えなくなる可能性が高いのである。
国連の世界食糧計画の予測によれば、「COVID-19の影響で、世界的な食糧危機が起こり、今後は1日平均30万人が餓死する恐れがある」という。由々しき事態が目前に迫っているわけだ。途上国の多くでは「コロナで死ぬか、食糧難で死ぬか」という最悪の選択を迫られている。
いずれにせよ、世界的な種子メーカーの動きは日本人の発想をはるかに超えているように思われる。世界がCOVID-19で右往左往している状況を横目で睨みながら、「種子争奪戦」を有利に進める布石を着々と打っているからだ。
言い換えれば、世界から貴重なタネが喪失したような場合には、最大の出資者である巨大種子メーカーや世界人口の抑制コントロールを目指すロックフェラー財団やゲイツ財団などが優先的に人類共通の財産である種子を独占できる可能性が大きくなった。ノーベル平和賞を受賞したアメリカの元国務長官ヘンリー・キッシンジャー曰く「アメリカの第三世界外交の最大の要(かなめ)は人口抑制策である。アメリカが必要とする天然資源の多くは発展途上国に眠っている。石油を支配する者は国家をコントロールできる。食糧を支配できれば、人類をコントロールできる」。
その食糧をコントロールするのが種子(タネ)である。このタネをめぐる争奪戦は、すでに述べたように始まっている。遺伝子組み換え種子の最先端の研究はアメリカの国防総省が主導している。世界が「見えない敵」と呼ばれる新型コロナウイルスとの戦いに気を取られている隙に、である。なぜなら、「新型コロナウイルス禍が終息した後には食料危機が待ち構えている」という読みのもと、敵対国家には種子の提供を拒否することができるからだ。
まさに「病原体の兵器化」や「武器としての種子」がアメリカ政府の主導の下で加速しているといっても過言ではない。利益最優先の種子メーカーとの戦いに勝つには、食や農業との向き合い方を全面的に変えることから始めなければならない。日本であろうと中国であろうと、伝統的な食材を守るには日々の食に感謝し、農業の重要性、そのカギとなる種子を大切に育むことから始めることだ。「フードテック」と呼ばれる人工的に食材を生み出す研究も進みつつあるが、安全性には疑問符も付きまとう。やはり合言葉は「自然とともに生きる!」でありたい。
未来の寿司ネタは昆虫?!
このところ欧米各国では昆虫への関心が急速に高まっている。もちろん、日本とは関心の方向が大きく違っているようだ。この6月頭にもアメリカのCNNでは人気女性アンカーが“トレンディー食”として「昆虫寿司」を紹介していたほどである。
番組ではその場でアメリカ人の寿司職人が握ったセミを使った昆虫寿司が振る舞われた。おっかなびっくりの女性アンカーが口にしたところ、意外にも彼女の口からは「Quite delicious!」の一言。「おいしい!」との感想だったが、付け加えて「まさか私の口から羽根が生えてきませんよね」と念を押していたのはご愛嬌か。
世界ではコロナ騒動がきっかけで、さまざまな分野で「Great Reset(偉大な仕切り直し)」が提唱され始めている。その先陣を切っているのが「世界経済フォーラム(WEF)」であるが、彼らは世界各国の政治、経済、メディアのリーダーを総動員して、「未来の主食は昆虫と海藻」とのキャンペーンを展開する力の入れようだ。
日本が誇る寿司文化であるが、このまま行けば、寿司ネタの主役がセミやバッタという時代が間近に迫っているのかもしれない。CNNの女性アンカーがいうように、調理次第では昆虫もおいしいのだろう。しかし、一例を挙げると、「セミのリスク」がまったく無視されていることは問題である。それは地中で17年近く潜んでいる間に、セミが大量の水銀や有毒物質を体内にため込んでいるからだ。シンシナティ大学の研究によれば、セミの体内には放射性はないが、有毒な物質がいくつも検出されているとのこと。農薬や化学肥料などが原因と思われる。
あまり公表されていないが、現在、接種が進んでいるワクチンにも、こうした水銀などが含まれているとの指摘もある。水銀は自閉症や認知症を引き起こすとも言われているわけで、そうした毒性要素を内々にもっている昆虫を食べることは、自らの命を縮めることにもなりかねない。日本人とすれば、旬の食材を大切にする健康志向の和食文化を世界標準として広めることに注力すべきであろう。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき)
国際政治経済学者。米国ジョージ・ワシントン大学政治学博士。清華大学客員教授。前参議院議員。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員などを歴任。『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日経ビジネス人文庫)など、ベストセラー多数。最新刊は『イーロン・マスク 次の標的:「IOBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。関連キーワード
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