歯止めがかからない原油価格高騰(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
「止まらない」原油価格の高騰
世界は、原油ばかりか、天然ガスや石炭の価格も高騰する「世界同時エネルギー危機」に見舞われようとしている。世界的な経済活動の再開にともない、電力需要が伸びている反面、原油や天然ガスの在庫は急減しており、その結果、価格高騰が起きているのだ。
米WTI原油先物価格は10月20日、7年ぶりに1バレル=84ドルで2014年10月以来の高値を付けた。天然ガスの価格も直近の6カ月間で2倍に上昇し、7年ぶりに最高値を更新した。原油価格の高騰はガソリン価格にも影響を与え、米国国内のガソリン代も1ガロン(3.78L)あたり3ドルを上回るようになった。また、電気料金も1年前と比べ5.2%上昇し、2014年以降で最大の上昇幅を記録した。JPモルガンは最悪の場合、原油価格は2025年に1バレルあたり190ドルに達することもあり得ると予測した。
原油や天然ガスだけではなく、石炭価格も上がっている。経済活動が再開されるにつれて電力需要が伸びているが、発電所の燃料である天然ガスの価格が高騰したため、安い石炭の需要が高まっているためである。世界の石炭価格の基準となっているオーストラリアニューキャッスルの発電用石炭はトンあたり202ドルであるとウォールストリート紙が報じた。コロナ禍前の2019年の価格と比較すると、石炭価格が3倍になっていることがわかる。
原油価格高騰の背景は
原油価格の高騰には、天然ガスの価格高騰が影響している。天然ガスは発電の燃料だけでなく、冷暖房、化学製品の製造、肥料、紙、ガラスの加工など幅広く活用される。天然ガスは関連業界の投資不足と在庫の減少で今年の年初から高騰した。天然ガス価格は原油価格に換算すると、1バレル=200ドルを突破し、その後も同160ドル台で高止まりしている。この価格はWTI原油先物価格の約2倍に相当することから、相対的に割安な原油を発電燃料に使う動きが欧州やアジアで広がり始めた。
これにより世界的に天然ガスの価格高騰が起きている。9月末を基準にするとヨーロッパの天然ガスの価格は年初より400%も上昇し、MW(MWh)あたり97.73ユーロにまで上昇した。ヨーロッパの天然ガスの指標となっているオランダの11月先物価格は、10月6日にロンドン取引所においてMW(MWh)あたり133ユーロで取引され、前日対比19%、年初対比では400%価格が上昇した。こうした状況はアジアも同様である。今年10月初旬のアジアの天然ガスのスポット価格は、昨年同時期と比べて、10倍を超える水準となった。
こうした流れを受け、各国間でエネルギー争奪戦が繰り広げられている。先日、ロイヤル・ダッチ・シェルがチャーターしたLNGタンカーがアジアに向かって航行していたが、途中でオランダへと航路を急変更した。
(つづく)
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