問われる長崎県宅建協会の『公』(3)
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入会を希望する諫早市の不動産業者Bに対して、根拠不明のまま、入会を可とした委員会の判断を覆した公益社団法人長崎県宅地建物取引業協会(以下、長崎県宅建協会)の理事会。この事実を知った会員からは、「権限の私物化ではないか」と、いぶかしむ声もあがっている。同協会ならびに公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会長崎本部の入会審査基準に照らし合わせると、具体的理由を欠いた入会不承認自体が、認められないことがわかる。
入会審査基準に矛盾
入会不承認について、長崎県宅建協会は、入会審査基準第3条1項の5号「取引の関係者に損害を与え、またはそのおそれが大であるもの」と6号「取引の公正を害する行為をなし、またはそのおそれが大であるもの」に該当すると長崎県建築家に説明していた。しかし、Bがそれに該当する根拠については、最終的な審査を行った理事会の場でも明らかにされていないという。入会審査基準第3条2項には、「前項各号については、具体的な事実に基づいて慎重に審査を行うものとする」としており、基準から逸れた審議であった可能性が高い。3月、Bは弁護士を通じて、長崎県宅建協会に、具体的事実に基づいた審査をしなかった理由の説明を文書で求めた。約1カ月後に出された回答は、入会審査基準に照らし審査をし、理事会で審議・採決して不承認になったという、まったくもって質問に答えていない内容だった。自ら入会審査基準を無視した判断をしたため、まともな説明ができないといったところだろうか。
独占禁止法に抵触のおそれ
県内約900の不動産業者が加盟する「長崎県宅建協会」は、供託金の負担軽減のみならず、情報の共有、ホームページでの取扱物件の紹介など、不動産業にとって商売に役立つサービスを行っている。また、公益法人として会員の社会的信用に箔をつけるブランディング効果もある。入会を認められなかったBは、不動産業を行ううえで、その出鼻をくじかれた。しかも、Bは、公益社団法人である長崎県宅建協会から、「取引の関係者に損害を与え、またはそのおそれが大である」などと、県建築課に報告された。風評被害も懸念される。入会希望者への不当な締め出しは、独占禁止法で禁止された「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(第8条1号)および「一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること」(同条3号)に抵触するおそれがある。抵触した場合、公正取引委員会は、「当該行為の差止め」だけでなく、「当該団体の解散」までも命ずることができる(独占禁止法第8条の2)。そうなれば、現在加盟している会員にとっても損害を与えることになるだろう。
(つづく)
【山下 康太】▼関連リンク
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