中国経済新聞に学ぶ~京都は第二の深圳になり得るか(後)
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京都にはまた、世界的な技術の測定、加工設備の製造会社35社で結成された、「京都を試作する」という技術団体がある。代表理事を務める佐々木智一氏によると、「企業にとって一番の出費は設備投資であるが、この団体のおかけでサンプルをつくり測定をするのに設備の購入が不要になり、加盟各社の設備を使うことで費用を極力抑えたかたちで試作ができる」とのことである。
パートナー各社に自社の設備を使ってもらうというやり方は、まさに京都人の協力精神の表れである。
最後に、「京都らしさ」十分のおしゃれで優雅な大型の研究所「京都リサーチパーク」を訪れた。
イノベーションデザイン部の井上良一部長によると、大阪ガスの工場を利用してこの地をつくり、現在の入居企業数は500社余り、従業員数は6,000人余りとのことである。
これら500社余りのなかには、島津製作所、堀場製作所、任天堂という名の知れたハイテク企業もあれば、発足間もない零細企業や実務スペースもあり、共通の会議ホールや交流センターもあって、大小さまざまな会社が共存共栄して、さまざまなかたちで技術交流や協力を展開できる。
井上部長は、このリサーチパークに関して2つの特徴を述べた。
1つは、ベンチャー企業の創業者は大多数が大学教授、企業の定年退職技術者であり、元から素養があってかなりの特許も有するなど、スタート位置が高かったこと。
もう1つは、若手創業者はわずか5%程度ということである。
この2つ目については、解せないものであった。中国の産業パークでは、若者が創業した会社が90%以上を占めるのに、日本の若者はなぜ会社を興さないのだろうか。井上部長によると、企業を興すにはまず技術開発力が必要、次にある程度の資金が必要であり、いずれも社会人なりたての若者からすればかなりのハードルだという。現在、このなかで創業した若者たちのほとんどは、十数年間働き、ある程度の経験や技術を積んだ上でやってきたのだという。
日本社会は保守的であり、なかでも京都は古都であるゆえ、自尊心の強い人が育つ。よって、持ち込み主義を嫌い、人の技術を真似するのをとくに嫌がる。こうした性格からイノベーションヘと走り、自分の好きな道を歩んでオリジナルの技術を開発する。だからこそ、あちこちの産業パークで一味違った技術や設備を目にしたのである。
平尾教授に対して、「京都は、技術開発力や工業基盤から見て、『日本の深圳』になれる条件を完全に備えている。世界大手500社に数えられる企業の立地数が深圳を上回っているうえ、技術開発スキル全体を見ても深圳に肩を並べている」と言っていた。しかし平尾教授は、京都には深圳にない問題点が2つあると言った。1つは資金が足りないことで、日本ではベンチャー投資が盛んでないのでスタートアップ企業が投資ファンドを獲得しにくく、ユニコーン企業であっても資金がネックで成長が鈍いのだという。
もう1つは市場がないことである。企業の開発技術は先進的であるが、国内市場が小さいことに加え、大企業は社内に技術開発スタッフがいるので、たとえ教授や技術者が興した企業であっても、研究の成果がすぐに製品となり市場化するのは難しい。
仮に、中国の企業がこれら京都のベンチャー企業に資金を提供して技術や製品を共同開発すれば、地元の企業が成長するだけでなく、中国企業も世界的な技術を吸収できる、といった相乗効果が生まれたりしないだろうか。
京都市は、世界各国の企業が大量に進出すれば、間違いなく「日本の深圳」にもなり、「日本の蘇州」にもなり得るだろう。
(了)
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