地元九州の活性化へ 上場企業誕生に向けた支援
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福岡証券取引所「九州IPO挑戦隊」
上場を目指す企業は少なくないが、厳しい審査がありその道のりは平坦ではない。そこで福岡証券取引所(以下、福証)では「九州IPO挑戦隊」を発足させ、上場を目指す企業を支援している。九州・沖縄・中国地域から多くの上場企業が誕生することにより、地域のさらなる発展を狙う。
上場へ一歩近づく九州IPO挑戦隊
九州を中心とした地域からIPO(新規公開株式)を増やし、地域の活性化に貢献することを目的に、2005年3月に創設されたQSP(九州中小・ベンチャー企業IPO支援プロジェクト)。その一環として09年7月、「九州IPO挑戦隊」が発足した。これは、3~5年以内の株式公開を目標とする企業に対し、QSP(構成機関:福岡県ベンチャービジネス支援協議会、(一社)九州ニュービジネス協議会、(独)中小企業基盤整備機構九州本部、福証)が運営に当たっており、その他多くの支援機関が、集中的にサポートするというプロジェクトだ。「監査法人によるショートレビューを受けられる水準まで、企業の経営力や組織力を高める」ことを目標とし、これまでに計63社が同プロジェクトに入会、そのうち5社が上場をはたした。
選考では、経営者に上場の固い意思があり、一定水準以上の上場に関する知識を備えていること、また売上規模や会社の組織体制が整っていることなどを総合的に判断する。入会するには企業が自発的に希望するほか、将来が見込まれると判断した企業へ福証から直接アプローチすることもあるという。
毎回、十数社の候補企業から4~5社に絞られ、同プロジェクトに選考された企業は、上場に近づくための手厚いサポートを受けることができる。支援策の1つ「IPOチャレンジアカデミー」では、入会企業のレベルアップのために組まれた独自プログラムにより、全9回のセミナーで上場に関する基礎的な知識やビジネスプランのブラッシュアップを行う。2年目からは成長シナリオを策定し、実際に上場の準備に入るという流れが組まれる。そのほかのサポートとして、福証では計画の進捗管理やさまざまな相談、財務・労務管理などを行う専門家の派遣(専門家は有料)、市場開拓やテストマーケティングなどの販路開拓支援、最適な資金調達方法の相談やベンチャーキャピタルなどとのマッチングなどによる資金調達支援がある。
これらのサポートを受けることにより、株式公開を実現するために「何を」「どのような手順で」「どのレベルまで」準備するかを明確化できる。
上場企業の誕生により、地域の活性化を促進
直近では、10年9月に3期生として九州IPO挑戦隊に入会した(株)フロンティアが今年11月、福証Q-Boardに新規上場をはたした。福証の上場式にはメディアも集まり、新聞への掲載や福証HPなどに式典の様子が掲載されることから、一定の宣伝効果が期待できる。
また、近年は人材不足が叫ばれているが、上場した企業からは「上場前までは採用募集をかけても数名しか問い合わせが来なかったが、上場後は多くの問い合わせが来るようになった」との声もあるという。
それぞれの証券取引所によって審査内容は異なるが、厳格な基準を満たして上場をはたした企業の社会的信頼は大幅に増すことはいうまでもない。福証の担当者は、これからも九州を中心とした地域の活性化のために、「地元九州で上場を目指したい」と考える多くの企業を支援できる体制を整えていきたいと話す。
東証、新市場区分へ 地方市場に新たな動きも?
22年4月4日、東京証券取引所(以下、東証)は現在の「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQ(スタンダード、グロース)」の4市場から、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの新しい市場区分へ移行する。
東証によると、市場第一部に上場している2,191社のうち約30%の664社、全上場企業では約26%の965社が、移行先として想定される新市場の基準を満たしていないという(6月30日時点)。また、市場区分の移行にあたり、上場廃止基準も現在のラインから引き上げられる。これにより、東証へ上場しようと考えていた企業が地方取引所への上場を目指すようになることも考えられる。
「地元九州や各地域の経済活性化には上場企業の誕生が必要不可欠」と福証の担当者は話すが、東証市場区分の変更は地方の活性化に「追い風」となる可能性もある。
【立野 夏海】
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