第二青函トンネルの是非と物流の在り方(前)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
第二青函トンネル構想が、民間ベースではあるが、水面下で進んでいる。津軽海峡に新たな海底トンネルを堀り、貨物列車を現在の青函トンネルから分離することを目指しているという。実現すれば、現在の青函トンネルは新幹線専用となり、運行速度の向上に繋がる。
現在の青函トンネルは、速度が遅い貨物列車が運転されるため、風圧で貨物列車が横転する危険性を回避する必要性から、新幹線が運転速度を合わせる必要があり、新幹線の最高運転速度が抑えられるという問題がある。
また、現時点では津軽海峡を渡る道路がなく、バス、トラック、自家用車が北海道と本州を往来する場合、フェリーを使う必要がある。これにより物流コストなどが高くなる。道路と鉄道貨物のトンネルを新設するプロジェクトが、第二青函トンネル構想である。
第二青函トンネル構想が浮上したのは2014年頃。16年に北海道新幹線の開業が予定されていたが、貨物列車と線路を共用する問題から、新幹線が高速走行できないことがわかった。そこで14年6月、青森県議会の阿部広悦議長が国土交通省に、新トンネル建設を非公式の要望として伝えた。
こうした声を受け、16年に日本建設業連合会鉄道工事委員会が、鉄道トンネルとして「第二津軽海峡線建設構想」を取りまとめた。さらに日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が17年2月、貨物列車用と自動車用の2本のトンネルを新たに建設し、トンネル内に送電線やガスのパイプラインを敷設する構想を発表した。
18年には、その案をベースに、道内の有識者で構成する第二青函多用途トンネル構想研究会が、上部に片側1車線の道路、下部に緊急用車両の走行路と避難通路を設置する案を発表した。これを改善するかたちで、20年には、JAPICが道路トンネルと貨物鉄道トンネルを合体させる改定案を発表した。
第二青函トンネルは、現在の青函トンネルと並行するかたちで掘削し、本州側の三厩(みんまや)と北海道側の福島を繋ぐ。
第二青函トンネルの上部が、火災や換気、事故の問題も加味して、自動運転車専用の片側1車線の道路、下部が鉄道貨物の線路と避難通路を兼ねた緊急車両が走行する道路となる。鉄道貨物線は単線で、旅客列車の走行は想定しておらず、トンネルの延長は31kmになるという。
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西九州新幹線整備の課題とは(前)貨物鉄道線は本州側が三厩まで、北海道側が木古内までのアクセス線を建設し、それぞれ津軽線、道南いさりび鉄道と接続させる。アクセス線は本州側12km、北海道側35kmである。これにより、中小国~木古内間に新たな貨物列車のルートが完成する。
道路については、本州側は東北自動車道の青森インターまでの60kmのアクセス道路を建設し、北海道側は松前半島道路に接続する。松前半島道路はすでに計画されている地域高規格道路で、函館江差道を経て道央自動車道に接続し、札幌方面へ繋がる。これらがすべて完成すれば、東京~札幌間が高速道路で繋がる。
第二青函トンネルは道路と貨物鉄道の併用トンネルであるから、内径15mの円形を想定している。現在の青函トンネルは内径9.6mであるから、その1.5倍である。
第二青函トンネルは海底下30mを通り、最大勾配25‰(パーミル)で地上と繋がる。青函トンネルは海底下100m、最大勾配12‰であるから、第二青函トンネルは海底に近い位置での急勾配のトンネルとなる。その結果、31kmという青函トンネルの53.85kmに比べて、トンネルの延長を40%も短くできるという。
貨物用の鉄道は単線で計画されており、途中に交換設備を設けるか否かは、現時点ではわかっていない。仮に設けなければ、30km以上の長大区間ですれ違いができないことになる。
(つづく)
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