保健機能食品制度の行方(4)トクホ制度の生き残り策
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「機能性表示食品」「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」で構成される保健機能食品制度の今後を占う。前回に続き、トクホ制度の見直しと生き残り策について考える。
使い勝手の悪い仕組みが低調の要因
トクホ制度が抱える課題について、業界団体の(公財)日本健康・栄養食品協会の土田博氏(特定保健用食品部長)は次のように話している。
「最も大きい問題は、機能性表示食品とトクホのすみ分けができていないこと。対策の1つとして、『特定保健用食品(疾病リスク低減表示)』をもっと活用する必要がある。しかし、事業者が使いにくい仕組みとなっていて、この点を解消しなければならない」。
「疾病リスク低減表示の通知は解釈に明確でない部分があり、また通知にある『医学的・栄養学的に広く認められ確立されているもの』を満たすためには、相当のコストと時間がかかると考えられる。ほとんどの企業では、申請は難しいとみているだろう」。
その他の課題として、表示可能な範囲の拡大や、既存商品の風味変更などにともなう「再許可等トクホ」の審査に柔軟性がない点などを挙げる。
通知の見直しは必須
トクホの疾病リスク低減表示の許可件数は、昨年末でわずか12件。関連通知が硬直した内容となっていることも、低迷している要因の1つ。疾病リスク低減表示の拡充に向けて、許可要件の明確化は必須となる。
ある識者は「疾病リスク低減表示の通知は、科学的な面でおかしい。用語の定義を含めた交通整理が必須となる」と指摘する。
今後、消費者庁が通知の見直しに乗り出すかどうかは不明。だが、トクホの疾病リスク低減表示を広げて、許可件数を伸ばすためには、許可要件の明確化と通知の見直しは避けて通れないといえる。
トクホの大部分は“自然死”を待つ運命?
機能性表示食品の台頭で、存在感が弱まったトクホ。国はトクホの復活を狙っているが、現状を見る限り簡単ではない。
制度導入からわずか6~7年の間に、業界は猛烈な勢いで機能性表示食品市場を形成してきた。この大きな流れをトクホ市場へ向かわせることは現実的でないとみられる。
あるトクホ企業の関係者は、「(この先)トクホ制度がどうなろうと積極的には活用しない。同じような表示が可能で、低コストで済む機能性表示食品制度を活用する」という。こうした声は、ほかのトクホ企業からも聞かれる。
今やトクホ制度は、一部の企業のために存在していると言っても過言ではない。加えて、これまでトクホがはたしてきた役割を機能性表示食品が引き継いでいる。そうした状況下でトクホ制度をテコ入れする理由について、国は明確にする必要がある。
トクホ制度の大部分を占め、構造・機能表示(身体の構造や機能に影響する旨の表示)を行う「トクホ」「規格基準型トクホ」「再許可等トクホ」。これらは機能性表示食品に徐々に市場を奪われ、“自然死”を待つことになる可能性がある。また、ほとんど利用されない「条件付きトクホ」は失敗した施策であり、将来的に廃止となってもおかしくない。
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トクホの疾病リスク低減表示検討会、制度全般の見直しを提言一方、機能性表示食品が永遠に手を出せない疾病リスク低減表示は、トクホだけに許された強みだ。疾病リスク低減表示の拡充は、消費者の商品選択の観点からもメリットが大きい。連載の第3回でも述べたが、この部分がトクホの生き残り策の核になるとみられている。
科学に基づく検討
トクホと機能性表示食品を比べて、「トクホは『上』、機能性表示食品は『下』」という声を耳にすることがある。しかし、実態を考えると、この考え方は間違いだ。
機能性表示食品制度には「トータリティー・オブ・エビデンス」の考え方が位置づけられている。これは、たった1つの試験結果ではなく、あらゆる研究データを総合的に判断して機能性を検討するというもの。
一方、トクホ制度にはそうした概念はなく、1つのチャンピオンデータ(数回の実験でもっとも良いデータ、都合の良い理想のデータ)であっても許可を得られる。トクホ審査に携わった学識経験者からは、「有意差があれば許可せざるを得ない」の声も聞かれる。
さらに、機能性表示食品の場合、届出資料を誰でも自由に閲覧できて、問題があれば国に申し出ることが可能。つまり、四方八方から監視できる透明性の高い制度だ。これに対し、トクホの申請資料は閲覧できず、多くの部分が“藪の中”に埋もれている。
反対に、トクホにも優れた面がある。その1つが、新規成分の安全性確認。機能性表示食品では安全性確認が十分でないケースも見られるが、トクホの新規成分は食品安全委員会で慎重に吟味される。このように両制度には一長一短がある。
遅くても23年度に本格化するトクホ制度の見直しでは、機能性表示食品とのすみ分け、国の健康・栄養政策との整合性などがポイントとなりそうだ。「トクホが『上』」といった間違った先入観が入り込む余地のない、科学をベースとした検討作業が求められる。
(つづく)
【木村 祐作】
法人名
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