保健機能食品制度の行方(5)栄養機能食品制度の見直し
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「機能性表示食品」「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」で構成される保健機能食品制度の今後を占う。第5回は、栄養機能食品制度の見直しの方向性について考察する。
ビタミンC・Eをベースに調査事業
保健機能食品制度の1つである栄養機能食品は、トクホや機能性表示食品と比べて話題に上ることが少ない。だが、食品企業に根強いニーズがある。というのも、表示のルールが明確で、費用も時間もかからないからだ。
栄養機能食品は、1日当たりに必要なビタミンやミネラルなどが不足しがちな場合に利用される。制度の対象成分はビタミン13種類、ミネラル6種類、脂肪酸1種類。
トクホや機能性表示食品と違って、国の許可や届出が不要。企業の任意で成分の効果を表示できる。対象成分の含有量が、国が定めた「上限値」と「下限値」の間に収まっていることが要件となる。
また、トクホや機能性表示食品は、特定の成分をプラスアルファで摂取することによって、何らかの機能性を期待するというもの。これに対し、栄養機能食品は不足すると健康に悪影響が出る栄養成分の補充が目的となる。
栄養機能食品制度についても見直しの時期に差しかかっている。このため、消費者庁では2021年度に調査事業を実施。水溶性の「ビタミンC」と脂溶性の「ビタミンE」について、科学的な知見の収集を進めている。
消費者庁食品表示企画課保健表示室の担当官は、今回の調査事業では既存の表示内容を拡充できるかどうかが大きな課題と説明している。
表示可能な効果の表現はあらかじめ国が定めている。たとえば、ビタミンCならば「皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」と表示できる。今回予定している見直しでは、現行の表示以外に、新たな効果を追加できるかどうかを検討する。
販売会社からは「機能性表示食品はビタミン・ミネラルが対象外のため、栄養機能食品の表示が増えれば魅力的」という声が聞かれる。
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【検証】トクホ“復権”に向けた消費者庁の検討会、失敗に終わる可能性も表示の拡充は、基本的に厚生労働省の「食事摂取基準2020年版」で報告された知見などに基づいて行われる。国の健康・栄養政策との整合性が求められることから、消費者庁では慎重に検討することになる。
栄養機能食品の悪用にメスを
栄養機能食品をめぐっては重要な問題が潜んでいる。制度を悪用した表示が横行しているのだ。
その典型例として、「栄養機能食品(ビタミンC)」の表記と並べて「コラーゲン1,000mg配合」とうたう商品などが挙げられる。表示内容は「皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」。この場合、消費者はコラーゲンにも同様の効果があると誤認しかねない。
さらに深刻な問題も。たとえば、「栄養機能食品(ビタミンB2)」と表示しながら、ビタミンEを大量に配合している商品などがある。この場合、消費者は不足気味のビタミンB2を補給する目的で栄養機能食品を利用するが、実際にはビタミンEを大量に摂取することになる。不足していないビタミン類については、ほかの食品からの摂取も合わせると過剰摂取につながる恐れがある。
これらは今回の見直しでテーマに上らない可能性もあるが、消費者が栄養機能食品を適切に利用できる環境(表示・広告のルール)の整備も喫緊の課題となっている。
(了)
【木村 祐作】
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