インバウンド消費が失速。ラオックスとマツキヨ、ドンキの業績に明暗(前)
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インバウンド(訪日観光客)消費バブルが弾けた。観光庁によると、2016年4~6月の訪日外国人は596万人と前年同期より19%増えたが、1人当たりの旅行消費額は16万円と10%減った。爆買いの“本尊”である中国人は22万円で、23%のマイナスだった。高額商品を中心とした爆買いは姿を消し、ショッピングは化粧品や日用品など単価の低い商品に移った。このインバウンド消費の変化が、小売業の業績に明暗を分けた。
ラオックスの全店売上は5月以降、40%以上の前年割れが続く
赤信号が灯ったのは、免税店チェーンのラオックス(株)。16年第2四半期(16年1~6月)連結決算は、惨憺たる成績だった。売上高は350億円と前年同期より22%減少。本業の儲けを示す営業利益は4億円で、前年同期の50億円から91%減った。最終損益は4億円の赤字(前年同期は46億円の黒字)に転落した。
その結果、16年12月期通期の見通しを下方修正した。当初1,000億円としていた売上高は、350億円減額し650億円(15年12月期は926億円)へ。70億円を見込んでいた営業利益は57億円減額し12億円(同85億円)へと大幅に下方修正した。最終損益は「予測が困難として」開示しなかった。
家電量販店だったラオックスは09年に、中国の家電小売りの蘇寧電器(現・蘇寧電雲商集団)の傘下に入った。その後はブランド品や化粧品なども扱う免税店に転換。中国人による爆買いで業績が急上昇した。ラオックスは爆買いの代名詞となった。
しかし、中国政府は4月、低迷する国内消費のテコ入れを目的に、中国人旅行者が海外で購入した関税を引き上げた。最大で60%の税金が課された。このため、中国人旅行者の消費は高額なブランド品から日用品に移った。爆買いは終わった。
中国人専用の免税店であるラオックスが被った打撃は強烈。全店売上高は、前年同月に比べて、4月が26%減、5月が44%減、6月が49%減、7月が44%減と極端な落ち込みが続く。回復するメドは立っていない。
マツモトキヨシの5~7月の既存店売上高はマイナス
黄信号が点滅したのが、ドラッグストアの(株)マツモトキヨシホールディングス(HD)。中核であるドラッグストアチェーンを展開する(株)マツモトキヨシの既存店売上高は、前年同月に比べて5月が2.1%減、6月が2.7%減、7月が0.6%減と、マイナスに転じた。
1年前は違っていた。インバウンド消費に沸き立っていた15年4月は前年同月比21.6%増、5月は12.9%増と2ケタの伸びを示していた。インバウンド消費の減速により、その勢いに陰りが生じた。マツモトキヨシHDの足元の業績は好調だ。16年4~6月期の連結決算は、売上高が前年同期比2%増の1,340億円、営業利益は9%増の71億円、純利益は27%増の52億円。小売事業の売上高に占める免税販売比率は9%。16年3月期通期の10%から1ポイント低下した。地方のグループ会社を再編したコスト削減の効果で、インバウンド需要の鈍化を吸収して増益決算となった。
インバウンド消費の伸びの一巡を受け、マツキヨはインバウンド対策を積極的に打ち出した。宝飾品や高級腕時計、バッグなどの高額品の消費が減速するなか、現在も外国人旅行者に人気なのが、安価で高品質な日本製の大衆薬だ。
大衆薬がドラッグストアのインバウンド需要を牽引してきた。中国人にとくに人気が高いのが「12の神薬」と呼ばれる商品だ。小林製薬の液体ばんそうこう「サカムケア」、龍角散ののど薬「龍角散ダイレクト」、大正製薬の口内炎治療薬「口内炎パッチ大正A」、参天製薬の目薬「サンテボーティエ」、久光製薬の消炎鎮痛剤「サロンパス」など。14年10月に中国のネットで「日本に行ったら買わねばならない」と紹介されて、「12の神薬」人気に火が付いた。日本製の大衆薬は関税を考慮しても、日本国内で購入した方が安くなる。関税引き上げ後も、「12の神薬」の人気は衰えていない。マツキヨは持続する需要を取り込むため、観光地などで訪日客向け店舗網を拡大した。
マツモトキヨシHDの17年3月期通期の売上高は前期比4%増の5,550億円、純利益は3%増の184億円と、増収・増益の見込みだ。(つづく)
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