注目が集まるトリアスの行方 運営を担う北山興産とは？（前）

トリアス誕生の背景

    糟屋郡久山町にある大型商業施設「トリアス」は、（株）ダイエーの元取締役である平山敞氏が1996年7月に設立した（株）トリアスによって開業された。開業には巨額の資金を要したが、ダイエーの創業者である中内㓛氏の存在も影響し、調達に苦慮していた。このため、（株）ヤマックス（熊本市）の代表取締役社長（当時）である茂森潔氏、宅島建設（株）（長崎県雲仙市）の代表取締役社長（同）である宅島壽雄氏の支援を得て、99年4月に「トリアス久山」の開業を実現。開業当時はスタッフの多くがダイエー出身者で占められた。同施設には会員制大型ショッピングセンターであるコストコの国内1号店が出店したこともあり、注目された。

　その後、平山氏は経営再建中だった（株）ニコニコ堂の社長就任のために退任し、茂森氏が2000年6月に社長に就任した。しかし、ヤマックスの事業環境の悪化にともない、本業に専念するため茂森氏も退任。03年4月から宅島氏が代表を務めている。

　05年5月に不動産流動化を行い、地域再生ファンドの（株）ジェイ・ウィル・パートナーズに信託受益権を譲渡し、トリアスは運営受託会社となった。06年4月、施設名をトリアス久山から「トリアス」に変更した。08年8月に信託受益権はジェイ・ウィル社からラサールインベストメントマネージメント（本社：米国シカゴ）に譲渡された。対象は、同社不動産ファンドが組成する久山プロパティー特定目的会社。信託業務は中央三井信託銀行（現・三井住友信託銀行）。トリアスは引き続き運営を担ってきたが、11年2月28日、中央三井信託銀行による契約打ち切りがあり、運営は（株）ケーファ（大阪市）が担うこととなった。

　その後、今年1月14日に（株）北山興産がラサール社からトリアスの信託受益権、グループ会社のプラザホテル（株）がマスターリース会社であるトリアスマネジメントの全株式を取得した。

西区姪浜でスタートした北山興産

　北山興産は、1972年6月に設立された不動産賃貸・管理業者である。創業時は福岡市西区姪浜を営業エリアにゴルフ練習場（旧・西武スポーツガーデン）などの運営を手がけていた。創業者であり、先代の北山正雄氏が複数の事業で取得した土地は広大であり、複数エリアに存在していたとされている。78年に基本構想が策定された姪浜地区区画整理によって、土地の売却および開発で得た資金を元手に複数の事業を展開している。これまで主に福岡市西区にある商業施設・ウエストコート姪浜、東区にある商業施設・イーストコート青葉などを開発してきた。そのほか、マンション事業、太陽光発電事業なども手がけている。また、正雄氏は姪浜地区の土地区画整理審議会の委員を務めた（90年6月～2003年3月）。

　現代表の北山英樹氏は正雄氏の四男にあたり、2代目として02年に代表取締役に就任した。プラザホテル建設、那珂川市の温浴施設「源泉野天風呂　那珂川清滝」の運営など積極的な事業展開を見せてきた。いずれの物件も現在は売却済み。

　一部の不動産資産は親族間で分散所有されている。なお、親族は北山興産の株式を保有しておらず、複数の運営施設を含む不動産が親族で小分けされて複雑な状況となっており、北山一族による経営への直接的な関与はないものの、資産の売却などについては合意形成が必要とみられる。

　同社は1995年、96年と相次いで開業した複合商業施設のウエストコート姪浜、イーストコート青葉など、各1万坪規模におよぶ土地の造成から企画、建築、リーシングに至るまでを外部企業との連携により実施してきた実績をもつ。両施設は核テナント以外にも、多彩なテナントを取りそろえることで、開業から月日の経った現在も高い集客力を維持している。

　また、福岡市早良区重留では出力規模750kWh、42円/kWhの太陽光発電設備を設置し、売電事業も行っている。その他の事業として、福岡市早良区にバッティングセンター、東京都豊島区池袋にゴルフスクールなど、サービス業も展開している。

（つづく）

【麓　由哉】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：北山　英樹
所在地：福岡市中央区大名1-12-5
登記上：福岡市西区内浜1-7-1
設　立：1972年6月
資本金：1,000万円
売上高：（21/9）15億2,433万円