2024年12月22日( 日 )

新電力の撤退相次ぐ、燃料高騰で経営圧迫

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新電力撤退 イメージ    新電力の撤退が相次いでいる。調査会社の調べによると、2021年度は過去最多となる31社が倒産や事業撤退、廃業を余儀なくされており、そのうち倒産は14件だった。

 大手電力会社は自前の発電設備をもっており、自社で発電した電力を消費者に供給し、余った電力を日本卸電力取引市場(JEPX)に販売している。一方、電力自由化で電力小売業に新たに参入した「新電力」の多くは自前の発電設備をもっておらず、大手電力が販売する電力を市場から調達しているため、市場価格によって経営が左右されやすい。

 日本では、再生可能エネルギーが推進されているものの、現在、電力の70%超が火力発電によるものだ。火力発電は、液化天然ガス(LNG)や石炭、石油などを燃料として電気をつくっており、ほとんどの燃料は海外から輸入されているため、燃料の供給体制や価格は国際情勢による影響を受ける。

 新電力の収支の内訳について、一例を挙げると、電力購入費59%、託送費17%、インバランス費8%、管理費など8%、収益8%()と電力の仕入れがコストの6割近くを占めており、薄利多売のビジネスと言える。そのため、電力の仕入れ価格が高騰すると、財務面に直撃する傾向にある。

 今冬は、世界的に天然ガスの需要が増えて不足するなか、ロシアのウクライナ侵攻の影響で天然ガスなどの燃料価格が大幅に上がっている。また今年3月には、福島県沖地震が起こって火力発電所が停止したため、日本卸電力取引市場の電力の仕入れ価格は前年比で2~6倍ほどになっている。電力の仕入れ価格の高騰により、経営が圧迫されたことが、新電力の倒産が相次いだ理由となっている。

 また、20年12月中旬~22年1月下旬まで、寒波による電力の需要増や天然ガスを燃料とする火力発電の出力が低下したことで、電力の需給がひっ迫して仕入れ価格が高騰。その結果、電力供給量が不足した場合にペナルティとして支払う不足インバランス料金が発生した。この負担が大きかったうえに、支払いからそれほど時期が経過していない今冬、電力卸売価格が高騰したことが、新電力の経営に大きな影響を与えた。

電力卸売価格の動向
(出典:JEPXシステムプライス1日当たりの平均値より作成)

 新電力では、電力の多くを市場からの調達に頼っているため、消費者への販売価格を市場価格に連動させる必要がある。そのために市場価格高騰の影響を大きく受けてしまった。一方、新電力のなかでも、自前の発電所をもち、発電事業者からの購入量と価格をあらかじめ決めて年単位などで契約する「相対取引」の割合が高い企業は、仕入れ価格が高騰した影響を比較的受けにくかった。今後は、再エネなど自社の発電所を増やし、相対取引を拡大させることが仕入れ価格高騰リスク対策の1つとなってくるだろう。

※:四国総合通信局・四国情報通信懇談会共催「スマートメーターに関する技術セミナー」(2015年9月30日)の「新電力事業の現状と運営のポイント」より ^

【石井 ゆかり】

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