年間50棟のこだわりと思いやり お客様第一、やえすの家づくり（後）

九州八重洲（株）　代表取締役社長
中島 久雄 氏

人財へのまなざしが組織力強化に

　──海外市場での事業内容についてお聞かせください。

　中島　コンドミニアムの賃貸・売買、戸建・タウンハウス事業などを手がけています。日本の戸建の建築確認申請図面も、すべて現地スタッフが手がけています。フィリピンの従業員、とくに女性は皆やる気があり、大変優秀です。働くモチベーションとして、両親に家を建ててあげたいという思いを話す人が多いのも印象的でした。

　現地の設計スタッフには、定期的に研修ビザで日本にきてもらっています。日本で学んだことを生かして、フィリピンでさらに活躍してほしいと思っています。

　──国内に目を向けると、福岡では官主導の再開発事業などもあり、建設業界は活況を呈しています。

　中島　数値目標の1つとして、経常利益10％を目指しています。一方で、海外情勢の影響もあり、建築資材が入ってこない状況が国内では続いています。当社では、住設機器メーカーやプレカット、建築資材を毎期年間発注するなど、各社とのつながりを大切にしていたおかげで工期が遅れるということは起きていません。

　──人手の方はいかがでしょうか。

　中島　社員大工と、専属棟梁制度の下、現場に入ってもらっている棟梁9人で年間50棟を建てます。内訳は社員大工が卒業生も含め3人、専属棟梁が6人です。40歳前後と60歳前後の2チームに分かれて現場を担当してもらっています。

　技術承継にも取り組んでおり、専門学校の卒業生に当社で1～2年かけて社会人の基礎を学んでもらい、その後、専属棟梁に弟子入りさせて現場を学んでもらいます。この間、給与の支給は当社が行います。5年ほどの修行期間を経ると、1人立ちできるようになります。

　期間終了後、そのまま当社の社員として社員大工になるか、一人親方として独立し、当社の仕事を請けるかを選択してもらっています。一人親方として独立された方は、平均して年間6棟は建ててもらっていますので、相応の年収になっています。

　──独立心をもって建設業界に残ってくれる若者の存在は、日本全体の活性化のためにもありがたいことです。

　中島　建設業界では長らく大工をパートナーとしてではなく、消耗品のように扱ってきました。本来であれば当社ではなく、団体や業界全体で率先して、棟梁や左官屋、板金屋などの職人を育てるような仕組みをつくらないといけないと思います。

    ──最後に新体制の下、貴社が目指す組織像についてお聞かせください。

　中島　私はこれまで、自分の役職の1つ2つ上の役職の視点で考えながら仕事に臨んでいました。社員に対しても、たとえば自分の役職が主任だったら課長になったつもりで、仕事を俯瞰的に見る習慣をつけるように伝えています。

　この習慣を社内で徹底することで、今後5年の間に九州八重洲を担う次世代の育成を目指しています。その一環として今年2月、社員のなかから年齢・性別を問わず、7人を選出し、八重洲の未来を自分たちでつくっていくという経営者意識を学ぶことを目的に「八重洲未来会議」を発足しました。

　1棟1棟お客様と膝を突き合わせて意見を出し合い、より良い住まいをお客様とともにつくり上げていく姿勢―当社のお客さまと現場を大事にするというモットーは、これからも変えずに守っていきたいと思います。

（了）

【文・構成：代　源太朗】

＜プロフィール＞
中島　久雄（なかしま・ひさお）
1972年5月生まれ。95年4月、九州八重洲興業（株）入社。用地仕入や多岐に渡る戸建住宅の企画開発を手がけ経験を積み、同社賃貸部門の法人化や三井不動産販売（株）との業務提携などに携わる。2000年12月、西武ハウス（株）入社。同社取締役を経て、08年4月、九州八重洲興業の専務取締役に就任。11年4月から九州八重洲（株）の取締役副社長を務め、22年4月、代表取締役社長に就任した。

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：中島　久雄
所在地：福岡市博多区東比恵1-5-5
設　立：1977年11月
資本金：1億8,000万円
ＴＥＬ：092-472-2888
ＵＲＬ：https://kyushu-yaesu.co.jp