細田博之衆院議長罷免を免れない
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は「主権者を軽んじていると、自民党はしっぺ返しを食らうだろう」と指摘した5月24日付の記事を紹介する。
岸田内閣の木原誠二官房副長官が5月22日放送の民放番組に出演し、株式の売却益などにかかる「金融所得課税」の見直しについて議論の先送りを示唆した。
「金融所得課税」の是正は岸田首相が提示する「分配問題」に関しての一丁目一番地ともいえる施策。
昨年9月の自民党総裁選で岸田氏は金融所得課税見直しを大きく掲げた。
岸田氏が掲げる施策は「新しい資本主義」。
「資本主義」がもたらす諸問題、弊害を是正するとの意味を込めているのだと窺われるが、その一丁目一番地の施策を闇に葬る方向を示している。
岸田氏は自民党総裁選では「分配問題」を前面に掲げたが、金融所得課税への言及もあり、株価が下落したことを受けて「分配も成長も」に発言を変えた。
首相就任後はこの発言がさらに「まずは成長」に変化した。
「成長優先」「成長重視」なら安倍・菅路線と変わらない。
より重大な問題は「成長重視」だった安倍・菅路線で日本経済は成長率引き上げにも失敗したこと。
岸田首相は5月の連休にロンドンを訪問し、金融街シティーで講演した。
その講演内容については、
5月7日付ブログ記事
「岸田資産所得倍増プランで目が点」
https://bit.ly/3sP4VIcメルマガ記事
「対米隷属岸田内閣支える凋落野党」
https://foomii.com/00050に記述した。
講演で岸田氏は「日本経済はこれからも力強く成長を続ける」と強調したが、日本経済はこれまで力強く成長していない。
この発言1つで言葉の信用を失う。
「これからは力強く成長する」と発言するなら意味もあるが、世界最悪の経済停滞の実績を携えて「これからも力強く成長を続ける」では失望しか生まれない。
日本のGDPがピークを記録したのは1997年。
そこから25年の時間が経過したが、25年間の日本経済の成長はゼロにも届かない。
ドル換算の日本の名目GDP水準は1995年を100とすると2020年は91。
米国が273に達し、中国が2034に達するなかで、日本だけが25年前のGDP水準を下回った。
1人あたりGDPで、西暦2000年に日本は世界第2位の地位に位置したが、2020年には世界第23位にまで転落した。
増加しなかったのはGDPだけではない。
労働者の賃金もまったく増加していない。
OECDが公表している購買力平価換算の1人あたり平均賃金で日本は韓国にも追い抜かれた。
1人あたり実質賃金指数は第2次安倍内閣が発足した2012年から2020年までの8年間で5.6%も減少した。
日本経済の問題は「成長できない経済」「減少し続ける労働者賃金」の2つに集約されている。
この日本経済実績があるなかで首相が「これからも力強い成長を続ける」と述べたのでは相槌を打つことすら不可能だ。
あまりにもお粗末なプレゼンテーションだ。
ロンドン講演の驚愕点はこれだけではなかった。
岸田氏が掲げる「新しい資本主義」とは一体何なのか。
根本的な疑問を浮かび上がらせる発言を示した。
それが講演の目玉施策ともいえる「資産所得倍増プラン」だ。
岸田氏は貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進め、投資による資産所得倍増を実現すると述べた。
具体的には少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充や、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など政策を総動員し「資産所得倍増プラン」を進めるとした。
積極的な資産運用へのシフトを推進するから、金融所得課税の適正化は、その妨害になると主張したいのだろう。
岸田氏は日本の所得分布の歪み、資産の賦存状況の歪みをまったく認識していないようだ。
この歪みこそ「日本資本主義の歪み」であり、「新しい資本主義」とは、その歪みの是正を狙うものであるはずだが、岸田氏はついに逆走し始めた。
金融広報委員会による「家計の金融行動に関する世論調査(2021年)」によると単身世帯の33.2%が金融資産ゼロ。
単身世帯一世帯あたりの金融資産保有額平均値は1,062万円だが、分布の中央値は100万円。
ほんの一握りの者が多額の金融資産を保有しているだけで、圧倒的多数の国民の金融資産はゼロから100万円程度の状況にある。
この状況下での「資産所得倍増」や「金持ち優遇金融所得課税の是正先送り」の方針は、分配格差是正に岸田氏が取り組む意思を持ち合わせていないことを表出するもの。
こんな政治が続けば庶民の暮らしは悪くなる一方だ。
※続きは5月24日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「細田博之衆院議長罷免を免れない」で。
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