事業リスク軽視の末路 ビジネスモデル揺らぐ「新電力」(前)
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2016年4月の電力の小売全面自由化にともない、大量に新規参入した「新電力」事業者。各社とも多種多様なメニュー・プランを提示し、全販売電力量に占めるシェアを約2割まで拡大させるなど、それまでの大手電力会社が築いてきた牙城を崩す勢いを見せた。だが、その新電力は現在、エネルギー価格の高騰による電力の卸売価格上昇などで経営が悪化し、破産や事業撤退が相次ぐ事態に追いやられている。
新電力各社で相次ぐ破産や事業撤退
新電力事業者の(株)ホープエナジー(福岡市中央区)は3月25日、東京地裁に破産手続開始を申請し、同日、同地裁から破産手続開始決定を受けた。負債総額は約300億円。ホープエナジーは東証マザーズおよび福証Q-Board上場の(株)ホープの連結子会社であり、2021年12月にホープの持株会社体制への移行にともない、エネルギー事業(電力小売、新電力)を承継した。だが、21年秋からの電力価格の異常高騰を背景として事業継続が困難となったことで、今回の措置となった。
太陽光発電機器製造と新電力事業を手がけるアンフィニ(株)(大阪市浪速区)は21年10月6日、東京地裁から民事再生手続開始決定を受け、その後にスポンサー選定による再建を進めていた。だが、再生計画の策定に必要な弁済原資を確保できるスポンサーを選定できず、再生計画案作成の見込みがないことが明らかになったことで、今年4月13日に同地裁から再生手続廃止決定と保全管理命令を受け、5月10日に同地裁から破産手続開始決定を受けた。負債総額は約86億円。
4月28日には、新電力事業者のISエナジー(株)(大阪市中央区)が大阪地裁に破産手続開始を申請した。ISエナジーは4月28日付で小売電力業務(ISでんき、ブロードでんき)を終了すると発表する一方で、都市ガスサービス「ISガス」については関連企業の(株)インソムニアに移管する。負債総額は約5億7,300万円。
こうした破産に至るケースが続出する一方で、新電力からの事業撤退も相次いでいる。一例を挙げると、みの市民エネルギー(株)(岐阜県美濃市)が2月28日に小売電気事業の停止を発表。3月25日には(株)エルピオ(千葉県市川市)が「エルピオでんき」の4月末での供給停止(5月末まで特別供給措置)を発表し、電力小売事業からの撤退を表明した。3月31日には本誌5月30日号「SIC」で既報の熊本電力(株)も電力供給の停止を発表したほか、(株)ウエスト電力(東京都千代田区)も電力小売事業の廃止を発表。4月11日にはNature(株)(神奈川県横浜市)も「Natureスマート電気」のサービスを停止して6月末ですべての電力供給を停止する旨を、4月27日にはTRENDE(株)(東京都千代田区)が6月末で「あしたでんき」の電力供給サービスを停止する旨を発表、といった具合だ。
これら電力小売事業からの事業撤退や電力供給停止の発表がある一方で、新電力の各社では現在、そのほとんどで新規の受付を停止している状況にある。16年4月の電力小売全面自由化の際には、大手電力会社によって独占状態だった電力市場の“開放”をうたって新規参入が相次いだ新電力は、販売電力量全体の約5分の1を占めるまでになった。だが、全面自由化からわずか6年余りの現在は青色吐息の状態にある。新電力に今、何が起こっているのだろうか──。
(つづく)
【坂田 憲治】
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