【清々しい品格(6・後)】20年後には経済力で日本を抜く
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歴代国王のバランス感覚で植民地化を防ぐ
インドシナ半島を歩けば、タイ国を境にして西側がイギリスの、東側がフランスの植民地になっていたことがわかる。イギリスの植民地は、現在の国名でいえばパキスタン、インド、バングラデシュ、ミャンマー(ビルマ)、そしてマレーシア半島(現在のマレーシア、シンガポール)である。東側はカンボジア、ベトナム、ラオスである。それぞれに王朝があったが、結局のところイギリス・フランスによって植民地化された。
なぜ、タイだけが自立・独立を勝ち得たのか!歴代国王たちの優れたバランス感覚で植民地化を防いだとしか言いようがない(タイの王政に関してはいずれ記述する機会があろう)。「独立・タイ国」を堅持できたからこそ国民は歴代国王に尊敬の念を抱いてきた。その最大の功労者はラマ9世で、70年間(2016年まで)、国王の座に就いていた。安定した統治体制が持続されていたからこそタイは後進国の発展モデルと評価された。
しかし、タイ国王統治体制は脆く儚い。タイ憲法では国王一族の地位は万全に守られているはずなのだが、国民の生活保証が不安定になるような環境に転落した際、また軍部から見切られた等々の局面になれば、容易に王政体制が崩壊するリスクが高いのである。ラマ9世はクウェート王政の追放を目のあたりにしたことで、一族防衛の重要性を痛感した。選択したのは王家の財産逃避・秘匿である。
ラマ10世、本気で国王プロジェクトを展開
世界に秘匿された膨大な埋蔵金・財産の3傑は宗教マネー(例としてはバチカン)、永く続いた王朝財産、そしてユダヤ一族の資産である。この“3傑資産”に共通しているのは蓄積に相当な時間を要しているということである。今話題になっているタイ国王一族の逃避・秘匿財産はラマ9世から2代遡っているとみられる。この詳細は8月末にレポートする。
この莫大な資産の存在を知ったラマ10世が本気になった。「我が父親である9世同様、国民から尊敬と崇拝を受ける国王になる」と決意した。
以前から国王プロジェクトが練り上げられてきた。前記の運河建設資金は、3兆7,000億円かかると見込まれている。資金の大半はこのプロジェクトから捻出され、タイ国内のインフラ整備に使われる。
驚くべき具体例を紹介しよう。タイ国も短期間で現代風の生活スタイルが定着し、膨大なゴミが発生するようになった。しかし、完全なゴミ焼却リサイクルシステムが構築できるわけがない。
ゴミの中途半端な焼却・焼き捨てでタイ国内2,000カ所でゴミが地下深くに埋められてある。こうした未処理のゴミの完全焼却システムを導入してすべて処理する。そこで残る灰は生コンの製造に使われる。タイ運河が建設されれば、両岸には広大なニュータウンが出現する。建築ラッシュが予想され、生コンが使われるようになる。そして何よりも掘り尽くした大きな穴を湖にする。要約すると今後、豪雨被害が懸念されるため、湖を防水の為の治水地域にするのである。
ここで紹介したプロジェクト案件を読めば、関係技術者・経営者の皆さんは「俺の出番である」と認識されるはず。計画では大半で、日本の技術を利用することが決定している。いずれ説明会をすることになろう。
タナワン氏の使命
王室プロジェクトの220案件がすべてタイ国内で行われれば、現代的な生活スタイルのためのインフラが一挙に充実する。タイ全土とはいわないが、主要都市では先進国に負けない生活環境が整備されるであろう。内需投資の集中により経済成長率が大幅に伸びることは間違いない。日本は下手をすればGDPで抜かれる日がやってくることにもなりかねない。
またまた日本はタイに抜かれたという事態
壮大なプロジェクトを成功させるには志が高い人物の活躍が必須条件である。その役割を担うのが国王ラマ10世の総秘書長役のタナワン氏である。下記の同氏のプロフィールを参照されたい。アメリカでの留学経験が長く、工学博士号を取得している。この優秀な理系の頭脳があらゆる重要な決定する際に役立っている。タイへ帰国後、前国王ラマ9世の秘書長として貢献した。そして現在のラマ10世からも全幅の信頼を得ている。その実績からもタナワン氏に品格があることがわかるだろう。
筆者とタナワン氏が会うのは、今回の東京での出会いで3回目である。初対面の4年前は来福されて会食を共にして当社で取材も行った。2回目はタイ・バンコクにある同氏の邸宅を訪問した時である。写真から想像できる通り、人間としての品格が際立っており、話すことも意見も的確。頭脳明晰であることは一瞬にしてわかる。何よりも「ラマ10世がタイ国民から崇拝し続けられる為には何をすべきか?」を24時間、自問自答していることがうかがえる。国際的な紳士として1級品である。ラマ10世にとって本当に心強い存在だ。
堅実な人口増・経済成長率
2000年からの人口増、GDPの推移、経済成長率を下記に記載した。人口増加率はベトナム、カンボジアなどが30%強であったのに対し、タイは11.1%と「自然体」である。GDPは00年に5兆698億バーツ(IMF推計)、今年は17兆796億バーツ(同)で、約3.4倍の成長をはたしている。日本円換算(1バーツ約3.7円)で約66兆円になる勘定である。日本のGDPが556兆円(内閣府による22年予測)で、10倍弱の差がある。
経済成長率は2000年から平均で3.5%を維持しており、着実な歩みである。先ほども説明した通り、国王プロジェクトは内需投資が主力となっている。恐らく当分の間、成長率は4%を超えるのではないか。加えること食糧安保が注目される時の流れとなった。「世界の台所」の力を遺憾なく発揮できる時代到来である。この優位性を上手に活用すれば食関連の売上は大幅に伸びる(インフレ価格高騰の有利性がプラスされる)。
実質的な経済成長率は高くなる。一方、日本側は現状の長期低落が続くし、パイも細くなる。20年以内にタイに追いつかれる確率が高いと予測して間違いないだろう。
<PROFILE>
タナワン・ブフクファン
米国アリゾナ州コチャイスカレッジ機械工学科卒、カリフォルニア州立ノスロップ大学電子機械工学部卒、ケネディ・ウェスターン大学産業工学部修士学位取得、同大学産業工学博士号取得、モトローラ社NASA技術支援部門に勤務、アポロ11号設計に参加、タイ王国国王主導プロジェクト及び人工降雨プロジェクト事務委員会会長兼王世子主管通信システム顧問、王室所属開発プロジェクト推進委員会委員兼顧問、国立開発行政委員会研究委員、人道主義的災難救護のためのタナワン・ブフクファン救護基金会長、ルンガケラヤ・エンジニアリング社代表取締役関連記事
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