2024年11月22日( 金 )

発展著しい新興国モンゴル カジノ設立で発展に弾みをつけるか

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 人口が増え、都市化が進むモンゴル。6月初旬に首都・ウランバートルを訪問。同国は豊富な資源を有する一方、各種産業を発展させようと、法整備を進めるほか、外資導入にも力を入れる。そのなかで同国の社会経済の発展の環境整備に尽力する弁護士のバットザヤ・ガンバット氏、同国の国会議員顧問として、カジノ法案を推進するドンドブドルジュ・バタ氏に話を聞いた。

伝統と両立させた開発を

中村氏、ガンバット弁護士(手前)
中村氏、ガンバット弁護士(手前)

    モンゴルが民主化を進めて約30年。当初は銅、石炭など鉱山関係を主体に発展してきたが、この約10年、政府は製造業の育成、輸出を志向するとともに、金融など各産業を発展させようとしている。

 弁護士のバットザヤ・ガンバット氏によると、近年農業も発展し、オーガニック製品、蜂蜜などが日本に輸出されているほか、従来自然任せであった養牧も管理技術が発展し製品の質が上がっているという。牛肉の主な買い手は中国で、加工品および半加工品を大量に購入している。モンゴルとしても輸出先の要望に応えるため、努力を重ねているようだ。ただ、主要な輸出先である中国が国境を100%開放しているわけではないこと、ロシアによるウクライナ侵攻などの要因から、楽観視はできない。

 都市化が進み、人々が都市部に移住するようになり、意識が大きく変わった。「皆が利益を追求するビジネスマンのようになってきている」。たとえば放牧で生産可能な牛肉の量を200kgとすると、牧場では300~400kgと多く生産できるため、牧畜への転換を考えるようだ。

 農業および鉱山開発のため土地が利用され、放牧スペースが減った。ただ、モンゴルにとって放牧は重要な伝統文化だ。保存と開発の両立を図るための法整備を行っており、今のところ大きなトラブルは聞かれないという(ガンバット氏)。

 金融をめぐり、デジタル化のスピードは速い。政府がデジタル上の署名を有効なものとして法整備を進めた結果、貸し借りが銀行のアプリで担保なしでできるようになるなど、市民が享受できるサービスが増えた。

 決済はブロックチェーンをベースにしたシステムが導入されている。またビットコインの取引所を2カ所設置している。デジタル技術をベースにし、金融など各分野につなげて発展させたい狙いがあるという。人口約340万人のモンゴルでは浸透するスピードが非常に速い。

 外資企業の進出状況について、日系企業ではKDDIの子会社のモビコムがモンゴル最大の総合通信事業者となっており、この20年安定して収益を上げているという。ほか、市中銀行で大きい銀行の1つであるハーン銀行には、エイチ・アイ・エスが出資している。最も成功しているのはカナダの地下資源開発企業で、法人税の納税額が1位という。政府は外資企業のための環境整備に務めており、現在では安心して投資してもらえるようになった(ガンバット氏)。

カジノで社会経済発展を

カジノ イメージ    モンゴルで進む大きな動きの1つがカジノ設立だ。同国国会議員顧問のドンドブドルジュ氏によると、政府は特区を約40カ所設立し、外資企業誘致を進めるなかで、カジノは誘致に有用という認識に至ったという。滞在中の外国人に有力な娯楽を提供でき、彼らには楽しく過ごしてもらい、モンゴルは外貨を得ることができる。また、コロナ禍の影響で、自宅で時間を持て余した市民が海外のオンラインカジノで遊ぶようになり、5人に1人がユーザーになっており、資本が海外に流出している。

 政府はこれらの状況から、カジノ法案を成立させるべきという認識だ。モンゴルでは、2016年にカジノ法案が可決されたものの、法律は穴だらけで廃止となった過去があるが、現在、カジノの認可の可能性は高いという。ガンバット氏もカジノは今後の外貨獲得、雇用創出などのために必要と語る。

 顧客としてまずは中国人、韓国人、日本人など外国人を、数年後には国内の富裕層を想定している。ウランバートルは、中国の北方、ロシアのシベリア・極東地域からはマカオ、シンガポールより近いという優位性がある。観光目的の来訪でもカジノがあると時間を過ごしやすくなる。

 オンラインカジノは、モンゴルに来なくても海外の人が遊べるため、モンゴルにお金が落ちる。カジノはモンゴル市民の入店・利用を禁止する方向で進められているが、ドンドブドルジュ氏らはその後、たとえば「税申告支払後に残る純利益の範囲内においてカジノで遊んでよい」という追加項目を入れるなど規制を徐々に緩和することを考えている。国内富裕層に国内のカジノでお金を使ってもらい、資金流出を防ぐためだ。

 カジノ事業に詳しい中村龍道ZANN CORPORATION Chairmanは、政府のカジノへのコントロールが重要であるとして、企業にライセンスを与えて運営させるよりも、政府が直接運営するほうが望ましいと語る。ただ、モンゴルにはカジノ運営の経験がなく、海外の組織の力が必要となることから、モンゴル政府に対して、カジノ運営の事業者に「カジノ運営を行うので投資をしてほしい、たとえば利益30%を還元する」と呼びかけることおよびプロ人材を直接雇用することを提唱する。企業にとってやりやすい条件で法整備がなされれば、集められると見込んでいる。政府運営のカジノとなれば外資企業も安心して投資でき、かつ世界初で相当なインパクトがあると強調する。

 発展著しい新興国モンゴル。カジノ設立でより人と金を集められる国になれるか、壮大な取り組みが注目される。

【茅野 雅弘】

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