【ラスト50kmの攻防】“つながらない新幹線”に試乗
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9月23日、九州新幹線長崎ルート(博多-長崎、延長143km)のうち最西端の武雄温泉-長崎(延長66km)が「西九州新幹線」として武雄温泉駅のプラットホームで在来特急と対面乗り換えする方法で営業運転を始める。これを前に、10日を皮切りに断続的に7日間開かれる試乗会に参加。全国の新幹線網には“つながらない新幹線”の現状と今後を探った。
9月14日午前9時すぎ。佐賀県江北町の長崎本線と佐世保線が分岐する肥前山口駅。試乗会参加者の受付が始まった。新幹線開業後、肥前山口駅は特急の停車本数が45本から14本に減便され、名前も江北駅と変える。
最初の体験は武雄温泉駅の同一ホームでの乗り継ぎ。肥前山口駅からノンストップで佐世保線を15分程走って新幹線・武雄温泉駅に。佐世保線(肥前山口-佐世保、延長49km)は全線単線だったが、博多-新鳥栖間の新幹線区間と新鳥栖-武雄温泉間の在来線区間の双方を走行可能なFGT(フリーゲージトレイン。軌間可変電車)の開発を前提に、国交省は肥前山口-武雄温泉の延長14kmを全額新幹線予算で複線化する計画だった。
ところが、FGTは開発に失敗。複線区間は武雄温泉駅から肥前山口駅の1つ手前の大町駅(大町町)までの9kmに短縮、大町駅から肥前山口駅の5kmは単線のままレールの継ぎ目を減らして高速対応とした。佐賀県は計画通りの工事を訴えたが、国交省は「FGTを導入しない以上、無駄な投資」(幹線鉄道課)と突っぱねる。
さらに長崎県内の佐世保線も長崎ルートの曲折した歩みを反映する。当初、長崎ルートは佐世保市(早岐)経由だった。しかしJR九州が「採算が取れない」と反対して、嬉野温泉駅経由の短絡ルートになった。その“佐世保外し”の代償として、長崎県は14億円を投じて同県内の佐世保線13kmの高速化工事を進め、新幹線開業に備える。
武雄温泉駅の同一ホームでの新幹線への乗り換え時間は5分。営業運転開始後の3分より長い。対面のホームに長崎行きの『かもめ』が待つ。東海道・山陽新幹線に投入された最新鋭車両N700S系と同型で『かもめ』は1編成6両。JR九州は4編成用意した。『かもめ』をバックに記念写真を撮る試乗参加者も少なくなかった。
開業区間の61%、40km余はトンネル。武雄温泉駅を発つと間もなく最初のトンネル、抜けたら次のトンネル。右手に次の新幹線駅・嬉野温泉駅前の「嬉野医療センター」を確認したら佐賀県と長崎県を跨ぐ6km程の「俵坂トンネル」に入る。
トンネルを抜けて次の大きな建物は、“かもめの巣”という愛称の「大村車両基地」。この区間は最高速度の時速260kmだろうか。茶畑や、遠目に大村湾の海が見えたかと思うと次々に消えていく。大村車両基地を過ぎ、3番目の新幹線駅・新大村駅が右手に見えた後は再びトンネル。明かりが見え始めたら減速して4番目の駅・諫早駅に入り、初めて停車した。
諫早駅の停車時間は3分。トンネル区間と明かり区間を繰り返し、7km超の最長「新長崎トンネル」を抜けると、窓の両側に建物が目立つようになって終点・長崎駅に着いた。
JR九州によると、武雄温泉-長崎間のノンストップはなく、最速達は諫早のみ停車する23分。各駅停車だと30分。筆者が体験した14日の試乗は往路も復路も諫早のみに停車して24分だった。
こんな短距離の高速鉄道を、豪華列車で走らせるJR九州にどんな目算があるのか。開業までに要した年月は計画決定から50年、建設費は概算6,179億円(2019年価格)。
これだけの時間とカネを費やし、現状のまま長期間放置すれば、後世から「壮大な無駄遣い」という誹りを免れない。往路24分、復路24分、合わせて48分の「短い旅」を体験し、その思いを一層強くした。【南里 秀之】
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