事業総利益を超える迷惑料に値上げ?~軍艦島と漁協(中)
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事業総利益を超える可能性
この迷惑料を現行の3倍となる1人あたり300円にすべきという声は、上陸見学の際の桟橋利用に関する事業者5社の協議のなかであがっているという。ツアー事業者によると、漁協との取り決めで、桟橋の利用は午前9時から午後5時までの間となっており、現在は、午前9時30分から午後4時30分までの間で1社あたり2回ずつ。合計で1日10回までとなっている。
ところが、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が現実味を帯びるなか、その構成資産に含まれていることもあって見学者が急増。6月の時点で年末までの予約が埋まりつつあるという。「現状では1年で20万人が限界」(ツアー事業者)と考えられており、朝と夕に残された30分ずつの枠で桟橋の利用回数を増やそうという案が持ち上がったという。その際、漁を控えてもらうため迷惑料を上げるべきとの意見が一部の事業者から出されたという次第だ。
では、桟橋の利用回数を増やし、1人300円に迷惑料を値上げした場合、どれほどの金額が漁協に支払われることになるのだろうか。14年度の端島上陸見学者は19万1,881人。1人100円なら、単純計算で同年度の迷惑料は1,918万8,100円だ。3倍となれば5,756万4,300円。14年度と見学者数が同じぐらいなら、迷惑料は6,000万円近くとなる。ちなみに、前出の同漁協が運営する直売所「でじま朝市」の14年度の売上高は6,409万円7,303円。同漁協の1事業の売上に匹敵する金額である。
もちろん、桟橋の利用回数が増えるわけであるから、その後の上陸見学者数は14年度よりもさらに増えることが考えられる。ツアー事業者は、「イコモスの世界遺産一覧表への『記載』勧告後、問い合せは急増しおり、休日はすべて満杯。平日も満員になることは珍しくなくなってきた。現状では20万人が限界だと思うが、桟橋の利用回数が増えれば年間30~40万人はいけるのではないだろうか」と予測する。年間30~40万人で1人300円なら、迷惑料は9,000万~1億2,000万円。参考までに、仮に3倍にした迷惑料と同漁協の事業総利益を比較するグラフを添付したが、値上げによって迷惑料が同漁協の事業総利益を超えてしまうことも十分にあり得るのだ。
(つづく)
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