研究所や体育館建設などで“ふるさと貢献” 久光製薬
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久光製薬(株)(東京都千代田区)が、2つの既存研究所を発祥の地である佐賀県鳥栖市に統合、新築する。同社はバレーボール女子Vリーグ1部の強豪「久光スプリングス」の練習拠点となる体育館もJR鳥栖駅東側に建設中。相次ぐ”ふるさと貢献”には業績回復につなげる狙いもあるとみられる。
同社は、江戸後期の弘化4(1847)年に鳥栖市で創業。戦前の1934年に発売した消炎鎮痛薬「サロンパス」が大ヒットして全国区に。その後も医療用湿布薬「モーラステープ」などで業績を伸ばした。ところが2016年4月の薬価改定で、1回の処方箋で処方できる湿布薬が計70枚までと制限され、売上高は同年2月期の1,618億円(連結決算ベース)をピークに年々減少。22年2月期の売上高は1,201億円(同)にとどまっている。
そうした状況下、九州本社・鳥栖工場(鳥栖市田代大官町)に併設する鳥栖研究所と筑波研究所(茨城県つくば市)を鳥栖市に統合する。同社広報・IR課は「研究現場と生産現場を近接させることで、研究現場のアイデアを生産現場でスピーディーに製品に反映させることが可能になる」と強調する。
同社は薬候補化合物から薬をつくる創薬よりも、既存薬を応用したり、薬効を高めたりする育薬を得意とする。現在、2つの研究所のうち筑波研究所では自社の経皮薬物送達システム(TDDS)の基盤技術開発や子会社化した米国製薬会社のTDDS技術の活用などに取り組む。一方、鳥栖研究所は製剤、分析、ヘルスケアの3つの機能をもつ。
新しい研究所は、鳥栖市姫方町の国道3号線沿いのニッカウヰスキー九州工場跡地の約1万3100m2。同工場は1989年6月に大分県日田市に移転。久光製薬が取得して倉庫として使っていた。建物は地上6階建て延べ床面積約2万4000m2。別棟で3階建ての立体駐車場棟も建てる。約120億円を投じて24年2月完成の予定で9月28日に起工式が行われた。
メインの研究テーマは、TDDS技術の独自開発になるものとみられ、勤務する研究職は150人程度を想定する。鳥栖商工会議所の徳淵薫事務局長は「頭脳集団が働き、居住することになるので、今までにない地域振興につながるのを期待している」と話す。
一方、同市藤木町のJR鳥栖駅東側では、「久光スプリングス」の練習拠点となる体育館(アリーナ)の建設が、来年3月末の完成を目指して急ピッチで進む。同社は、スポーツをビジネス創出に活かす国の施策に呼応して、女子バレー部を経営する子会社「SAGA久光スプリングス」を20年3月に設立した。
「久光スプリングス」は、前身チームの本拠地だった兵庫県神戸市を練習拠点、鳥栖市を本拠地とするダブルホームタウン制を敷いているが、練習拠点の完成後は本拠地との一本化を計画。アリーナに隣接するサッカーJ1リーグ「サガン鳥栖」のホームスタジアム「駅前不動産スタジアム」との相乗効果も考えて、スポーツビジネスを模索する。
アリーナは地上2階・一部3階建て。延べ床面積約8600m2。メイン(長辺48m、短辺30m)とサブ(長辺、短辺各32m)があり、高さはともに18.7m。バレーボールコートはメインで3面、サブで2面確保できる。床材には、衝撃吸収性の高い「タラフレックス」を使用する。
観覧席は2階に車いす席24席を含めた1468席。クラブハウスやトレーニングルームなども確保する。敷地約1万5000m2は市有地。市が大半を30年間無償で貸し付け、アリーナの一部は一般にも開放される。
同社は9月21日、福岡市の「ららぽーと福岡」内の子ども向け職業体験施設「キッザニア福岡」に医薬研究所パビリオンを出展した。白衣を着た子どもたちが、医薬研究者になって冷却ジェルシートのサンプルづくりを体験する。子どもたちに高い人気を誇る施設への出展で親世代への社会貢献イメージの向上も目指しているものとみられる。
【南里 秀之】
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