2024年12月23日( 月 )

シダックス大混乱、創業家=オイシックス連携に取締役会猛反対(後)

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 学校給食、社員食堂、病院、介護施設向けの給食ビジネスを手がけるシダックスの経営が大混乱している。きっかけは、有機・無添加食品の通信販売会社「オイシックス・ラ・大地」が、シダックス株の公開買い付けを始めたことだ。シダックス創業家と足並みをそろえた動きだったが、そこに「待った」をかけたのがシダックスの他の取締役。創業家の二代目経営者が“お家再興”を賭けた乾坤一徹の宮廷クーデターといえる。

創業家はオイシックスと手を組み経営権を取り戻す

事業継承 イメージ    このままでは、ユニゾンにシダックスを解体されると判断した創業家は巻き返しに出る。

 切り札としたのが、創業家とユニゾンとの間で締結された株主間契約である。ユニゾンは2019年5月の資本参加時に、いずれ株を手放すときは創業家かその指定先に売るとの契約を創業家と結んでいた。

 創業家は22年6月末、売却請求権を行使し、売却先としてオイシックス・ラ・大地を指名した。オイシックスは8月30日、TOB(株式公開買い付け)を実施。ユニゾンが保有する約27%の株式をすべて買い取ることを目指した。

 シダックス株の約33%を保有する創業家と合わせると、保有比率は約60%になる。過半以上の株を握り、反創業家の取締役を一掃し、創業家が主導権を取り戻すことを狙った。「お家再興」である。

給食などフード関連事業の争奪戦

 ところが9月5日、シダックス取締役会はTOBに反対を表明した。利害関係者の創業家らを除く取締役3人で決めた。

 シダックスの取締役会は次のように主張する。今回のTOBが、「フード関連事業子会社の株式の過半数を当社から取得することを最終的な目的としている」(9月15日に公表されたシダックスのプレスリリース)。

 実はシダックスは6月、「牛角」や「大戸屋」などを展開する外食大手コロワイドから給食事業の買収提案を受けていた。

 社員食堂や病院向け給食などのフード関連事業はシダックスの祖業事業で、現在も売上高の約45%を占める主力事業だ。それをコロワイドが狙っていたように、オイシックスもまたフード関連事業に狙いを定めているというのだ。

 ところが、コロワイドは9月14日、「混乱を招く」としてシダックスへの事業買収提案を取り下げた。「これにて一件落着」したわけではない。振り出しに戻った。

創業家と取締役会が歩み寄り

 シダックス取締役会は、コロワイドからの事業買収の提案などを十分に検討しないまま、創業家がオイシックスへの売却を「密室で決めた」と批判。ユニゾンも取締役会の賛同をTOB応募条件としている。これに対し、オイシックスは「ユニゾンはTOBに応じる義務」があると主張している。

 東京地裁は9月1日、ユニゾンに対し、オイシックス以外の第三者への株式売却を禁止する仮処分を決定。オイシックスはユニゾンが売却に応じない場合、創業家に法的措置を求める考えだ。

 TOBの混乱長期化を受けてシダックス取締役会と創業家は、フード関連子会社の売却の是非や、最適の協業先を検討する委員会の設置に向けて協議する方針を9月26日に確認した。これを受けて、オイシックスは当初9月28日までとしていたTOB期間を10月5日、さらに10月20日まで延長した。

 委員会設置などの協議で合意が成立し、シダックスの取締役会が反対の意見表明を変更すれば、オイシックスがユニゾンから株式取得に向けた交渉が進む可能性がある。

創業者から二代目への事業承継の悪しき事例

 そもそも騒動の発端は、取締役会で劣勢にある創業家がオイシックスと組んで、経営の主導権を取り戻すことを狙ったことにある。

 取締役会が開示した資料によると、シダックスの創業者である志太勤取締役最高顧問の長男で、会長兼社長・志太勤一氏の取った一連の行動を徹底的に批判している。

 「今回のTOBは、フード事業をオイシックスに売りたい創業家が、取締役会を無視して進めたもので、志太勤一氏は取締役会での協議内容をオイシックスに流している」「協業に手を挙げた(オイシックスとは)別の候補潰しをやった」「シダックスの正式な指揮命令系統に従わない行動を(志太勤一氏)は取っている」といった、びっくりするほど踏み込んだ、反創業家の内容になっている。

 シダックスの経営混乱の元凶は志太勤一会長兼社長がトップの器ではないことに尽きる。創業者から二代目への事業承継の失敗は、(株)大塚家具が典型だが、シダックスもしかり。事業承継の悪しき事例となった。

(了)

【森村 和男】

(前)

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