検証!!日本電産VS東洋経済 インサイダー取引疑惑をめぐる仁義なき闘い(後)
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経済界のホットな話題は、モーター世界大手の日本電産と経済専門誌東洋経済のバトルである。インサイダー取引疑惑を報じた東洋経済に、日本電産は法的措置をとると発表。両社の間で、「仁義なき闘い」が繰り広げられることになった。一体、何が起きたのか。東洋経済の記事を検証してみよう。
役員・幹部が大量退職の危機
東洋経済オンラインの報道で、「これはヤバイ」と思わせる記事がある。引用する。
株価至上市場主義が吹き荒れる日本電産に背を向けて退任する役員が相次いでいる。今年だけで関氏以外にもすでに8人が退任した。そのなかには1980年代に入社したいわゆる生え抜きの役員も2人いる。
役員だけでなく、社員レベルでも大量退職の危機にある。
入社した社内文書によると、昨年4月から今年3月末までの1年間で関連会社への出向も含めて253人もの本社社員が退職している。日本電産本体の社員数は2,500人あまり。じつに10人に1人が退職したことになる。
さらに、今年4月から8月末までの5カ月間で早くも113人が退職した。内訳を見ると、関氏が担当した車載事業本部の社員が昨年4月から今年8月末までに合計で120人と目立つ。関氏辞任をめぐる経緯に嫌気が差したとみられる。
インサイダー取引疑惑や関氏の解任騒動よりも、大量退職がもたらす内部崩壊を伝えるこの記事が最もインパクトがある。
稲盛氏の名言「動機善なりや、私心なかりしか」
カリスマ経営者と仕事をするのは難しい。いったん後継者に権力の座を譲りながら復帰したのは日本電産の永守重信会長兼CEOだけではない。
(株)ファーストリテイリング会長兼社長・柳井正氏は02年に社長の座を現(株)ロッテホールディングス社長・玉塚元一氏に譲ったが3年後に復帰。ソフトバンクグループ(株)会長兼社長・孫正義氏も15年にGoogle出身のニケシュ・アローラ氏を後継者としてスカウトしたが、わずか1年で去った。
成功したカリスマ経営者の引き際が難しいのは、権力という「魔物」に憑りつかれているからだ。一代で世界的な大企業をつくり上げ、長く権力の座に君臨してきたカリスマが、年を取ってくると権力を手放したくなくなり、永遠願望が出てくるは人間の「業」だ。
傑出した経営者と評価された人物が、引き際を誤り、晩節を汚したケースは少なくない。
権力という「魔物」をどう克服するか。8月24日に亡くなった京セラ(株)の創業者の稲盛和夫氏の生き方が示唆に富む。
カリスマ経営者である稲盛氏は晩年、会社への執着を断ち切るため、臨済宗妙心寺の円福寺(京都府八幡市)で得度(出家)した。
「新しい事業を始める際に、もっとも重要なこと、それは自らに『動機善なりや、私心なかりしか』と問うことだ」。月刊誌「致知」(2004年12月号)の巻頭言に、稲盛氏はこう書いた。この言葉が稲盛哲学の核心である。
第二電電(株)(現・KDDI(株))を立ち上げるとき、経営破綻した日本航空(株)の会長を引き受けるとき、「動機善なりや、私心なかりしか」を自問自答したという。
稲盛氏と並び立つカリスマ経営者である永守重信氏は、ぜひ、稲盛氏の「権力」の魔物を断ち切る覚悟を見習ってほしい。
(了)
【森村 和男】
法人名
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