中国共産党第20回党大会と日中ビジネスの可能性
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、11月11日付の記事を紹介する。世界が注目するなか、中国では5年に1度の共産党大会が開催されました。3期目に突入することになった習近平主席が提唱した「中国式現代化」は国内的には「中華民族の偉大な復興」を推進するうえでの目標ですが、同時に発展途上国に向けての「中国式経済発展モデル」の普及を意図したものです。
今日、世界は環境、食糧、エネルギー危機はいうにおよばず、感染症の蔓延は深刻化し、通商摩擦やテロや戦争の危険性も増す一方です。しかしながら、日本もそうですが、アメリカやヨーロッパ諸国は自国内の問題の解決もままならず、世界的な難題に有効な手立てを講じることができていません。
15億人に達する世界最大の市場を有する中国であればこそ、「共同富裕」と称する「中国式現代化」を通じて巨大なマーケットを開放することで南北間格差を解消することにつなげようとする狙いが読み取れます。かつて日本はバブルの時代を経験し、「メイド・イン・ジャパン」の商品が世界を席巻し、アメリカを凌駕する「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と恐れられたものです。
しかし、自国の市場を閉鎖し続けたため、バブル崩壊とともに「失われた30年」の泥沼に飲み込まれてしまい、いまだ浮揚できていません。中国はそうした日本の失敗から教訓を得ているに違いありません。
習近平主席は「豊かな自然は金銀同様の価値がある」と述べています。本来、日本人の価値観は自然を大切にし、自然とともに生きるというものでした。四季折々の自然の変化を愛(め)で、自然の恵みを感謝して暮らしていました。こうした価値観を共有する商品やサービスを日中共同で開発し、世界の市場に投入する時ではないでしょうか。
また、両国は高齢化社会に突入しており、健康、医療、福祉、介護の分野においてはとくに大きなビジネスチャンスが眠っています。その観点から見れば、中国政府の推進する高いレベルの対外開放や外資参入のネガティブリストの合理的削減は大いに歓迎されます。
日本貿易振興機構(JETRO)では「中国式現代化」に大いに注目し、「革新的なブレークスルー」になり得るとの見方を紹介しています。世界の140の国にとってもそうですが、日本にとっても中国は最大の通商貿易相手国に他なりません。知的財産権の保護の問題などもありますが、中国が新たに掲げる「現代化」政策の実現にとって、日本の持つ技術や経験が役立つ可能性は極めて高いものがあるのは事実です。
たとえば、海洋資源開発に関連する環境保全やカーボンニュートラル目標の達成に向けてのクリーンな技術、はたまた食の安全管理に関連する水質浄化や土壌改良などの分野でも日中の協力は世界にとって朗報になるはずです。
コロナ禍や政治的対立がありながらも、アメリカと中国の貿易量は拡大を続けています。ヨーロッパも同様です。日本のみが対中貿易量が減少するという異常な状況が続いているわけで、発想の転換が求められます。
いうまでもなく、日中間にはさまざまな課題と可能性があります。現在、両国の関係者の間で検討が進んでいるのは環境問題やコロナ対策を含む災害対応の分野における日中協力の促進とアセアンを中心とするアジア全体を包括する資源エネルギー開発構想を日中のイニシアティブで提唱するというものです。
気候変動問題は中国にとっても日本にとっても深刻な影響をもたらしています。近年、地球環境が限界に達しつつあり、野生動植物や海洋生物の激減が問題となってきました。そのため、パンデミックや環境問題対応でも日中が共同戦線を張り、アジアをリードする可能性を見出そうとするのが「気候安全保障政策」です。
日中両国にとっての未来は競争関係にも協力関係にも進展する余地が多分にあります。問題はどちらを優先して先手を打つかということです。2023年9月には海南島を会場に、第1回となる「中国BOAO国際博覧会」が計画されています。日本の未来先取り技術やサービスを売り込むチャンスになりそうです。
次号「第318回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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