2024年12月23日( 月 )

世界遺産登録で決意を新たに!次世代へ伝えたい端島(軍艦島)

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待ちわびた登録決定の瞬間

世界遺産登録決定後の瞬間<

世界遺産登録決定後の瞬間

 7月5日午後10時35分頃、長崎港で、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」の世界文化遺産登録を受けて、歓喜の声があがった。1974年の閉山以来、無人の島となっていた長崎市端島(通称「軍艦島」)が、海底炭鉱の島として、石炭エネルギーで日本の近代化に貢献してきたこと、島で暮らしていた人々の思いを次世代に受け継ぐために活動してきた人々の想いが実った瞬間だった。

 当日、旧産炭地域の伊王島、池島、高島の振興を目的とするNPO法人長崎アイランズアクト3の呼びかけで、船による端島周遊のサンセットクルーズと祝賀会が開催された。参加したのは、端島の世界遺産登録に取り組んできた関係団体の代表者、マスコミ関係者など約60名。世界遺産委員会の審議が1日延びたため、集まった人々は、端島周遊後、固唾を飲んで吉報を待ちわびた。審議延期への不安を感じながら迎えた登録決定の瞬間である。喜びもひとしおだった。

大切なのは“次の一歩”

長崎市端島(軍艦島)<

長崎市端島(軍艦島)

 近代化遺産研究会、軍艦島研究同好会、端島同窓会、端島会など、歴史に埋もれかけた端島の記録を掘り起こして研究を重ね、広く世間に伝えてきた各団体の関係者は互いを労うとともに、今後の活動における決意を口々に語った。端島閉山40周年に際し、神道青年会が同会60周年行事として企画した端島神社での祈祷を行った大浦諏訪神社・今村豊親宮司は、「高島、端島の人たちが、我が国を支えてきたことを次の世代に伝えてください」と、集まった人々に呼びかけた。端島同窓会の石川東会長は、「廃墟の端島ではなく、“全盛の頃”の端島を受け継いでいきたい」と語った。「世界遺産にするためには、文化的裏付けが必要ということで、5年前に国の指定文化財になるよう国政の場で取り組んできた」という公明党の秋野公造参議院議員も集まった人々と喜びを分かち合った。

 アイランズアクト3の理事長で、軍艦島上陸ツアーの事業者である(株)ユニバーサルワーカーズ・久遠龍史社長は、「海外の圧倒的な力に屈せず、抗った結果、驚異的なスピードで産業革命を起こし、世界のトップレベルになった。その日本人の力を、端島は素直に伝えられる場所です。今後もいろいろな手法を用いて、その意味と価値を伝えていきます」と語る。15年前から端島を研究し、世界遺産化の志を持っていた同社マネージャーの裕子夫人とともに二人三脚で取り組んできた。一方で、8月1日に前編が公開される映画「進撃の巨人」のロケを誘致。今後も伊王島で映画とタイアップしたイベントを実施するなど、若い世代へのアプローチにも注力していく。

 人々から忘れられかけた島が、世界中の注目を集める存在になった。しかし、あくまでもゴールは、世界文化遺産登録ではなく、島の物語を世界中の人々に伝えることにある。祝杯をあげた後、関係者たちは、“次の一歩”について語り合っていた。

【山下 康太】

 

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