大炎上したコロワイドの蔵人会長の過激発言(後)
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鬼になることがリーダーの務め
蔵人金男氏は47年8月3日、神奈川県逗子市で生まれた団塊の世代。65年、日本大学藤沢高校を卒業し、食堂を営む(株)山本商事(現・(株)コロワイド)に入社。父親がやっていた中華料理店を改装し、77年に居酒屋「甘太郎」の1号店を開いた。83年社長に就いた。
コロワイドはM&A(合併・買収)をテコに成長してきた。居酒屋「北海道」、レストラン「ステーキ宮」、焼き肉「牛角」、回転ずし「かっぱ寿司」を次々と傘下に収めてきた。
蔵人氏はマスコミにほとんど登場しないことで有名だが、日本経済新聞(14年10月28日付電子版)の取材に珍しく応じた記事を目にした。『「『カンパニー』の意味は同じパンを食べる仲間、という意味なんだ」。蔵人会長の口癖で、傘下に収めた企業の事務所は原則、横浜ランドマークタワー(横浜市)にあるコロワイド本社に移転させる。「近い場所で仕事したほうが、意思疎通が速い」。一体感をもとに傾いた企業を再建し、迅速に成長力へ転換するビジネスモデルだ。
生え抜き、買収企業関係なく社員に声をかけて回る。経歴に関係なく力があればどんどん重用する一方で、過去に実績を示せなくなった重役を更迭した激しさを併せ持つ』
どうやら、経営者と社員の一体感を強めるのが蔵人流といえそうだ。だだし、それには「鬼の存在」が不可欠だと社内報で語っている。
『パワーと意識が希薄な無能な善人達ヨ。常日頃から言っている。リーダーは、鬼と仏の間を行ったり、来たり、是是非非で考える。叱る時は、叱る。褒める時は、褒める。だが全員、仏をやりたがる。裏付けのないやさしさ。根拠のない意識を植え、お馬鹿一匹出来上がりだ。』
こうも言っている。『鬼を長い間していると孤独です(当たり前)。寂しいからといって、部下に擦り寄っては駄目。超然としていなさい。』
なぜ、鬼にならなければならないか。「組織運営上、赤字は重罪」であるからだ。
コロワイドの17年3月期の連結最終損益は46億円の赤字に転落する。傘下の「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト(株)が59億円の最終赤字になる見通しなるためだ。すぐにカッパ・クリエイトの社長を更迭した。赤字転落という重罪に、蔵人氏の怒りが爆発。それが社内報での社員に向けられた過激発言となったようだ。
一体感を高める秘策は、毎朝の社員との握手と挨拶
コロワイドは、買収を重ねて急成長を遂げてきた。寄せ集めの組織で、人事、教育体系が整っていない。蔵人会長が強烈な個性で引っ張ってきたが、なかなか思う通りにいかなくなった。それが、今回の事態を招いたといえる。
藏人氏の社員に対する接し方で、目に止まったのは先の日経の記事。一体感を高めるため、『生え抜き、買収企業関係なく社員に声をかけて回る』というクダリだ。
筆者は、社員に対する接し方の基本は「社員に声をかけて回る」だと思っている。かつて『日経ビジネス』(10年4月26日号)の「握手と挨拶で職場を変える」という記事を読んで納得したことがある。
独自動車メーカー、アウディの日本法人、アウディジャパン(株)社長を07年から10年まで務めたフランス人、ドミニク・ベッシュ氏の社員に対する接し方を取り上げていた。ベッシュ社長は、毎朝10分程度かけて、80人ほどの本社で働く従業員と握手することを日課とした。社長が普通は関わらない業務をやっている部署の人とも、毎朝1回は顔を合わせることで、社内の持つ雰囲気を察することが出来る。社長に赴任したとき、従業員の一体感がなく、バラバラであった状況を見て、この毎朝の行事を敢行したという。
従業員との接し方を考えるうえで、毎朝の「握手と挨拶」はそれなりに効果がありそうだ。
(了)
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