2024年11月22日( 金 )

溶けて溶けてどこへ行くの? 我々には覚悟はあるか~九州建設まで溶けるの、溶けないの(9)

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福銀、再生ビジネス完成

 福銀も平成初頭のバブル崩壊以降、融資先との向き合い方については大いに苦労し、試行錯誤してきた。結果、今回の九州建設の再生処理で、ついに芸術的な再生ビジネスを極めたのではないか! 先に、「今回のM&A成功の要因は福銀の賛同があってこそ」と指摘した。九州建設再生のために10年7月山内征史氏を代表取締役副社長として派遣したのだ。同氏はふくおか債権機構社長として辣腕を振るった人物であった。福銀関係者の中では再生引受人として、最高の人材と評されていた。つまり福銀から送り込める人物としては最大級といえる。九州建設再生に向けた福銀の並みならぬ意気込みがわかるというものだ。

 平成初頭バブルまでは、「福銀は、メイン先は潰さない」という定説があった。福岡玉屋の支援対応ではまさしくこの定説を貫いたが、しかしこの会社は倒産した。福銀はこの「メイン先を潰さない」という方針を貫くことに動揺したのである。その影響で、バブル崩壊後の一時期は「福銀はメイン先を潰す」というこれまでとは正反対の悪評が流された。この悪評を気にした福銀は軌道修正をした。その一例が徹底した高木工務店擁護であった。だが一人の行員を幹部として派遣しても事態改善にはならずこの会社も倒産した。高木工務支援で得た福銀の教訓は「無駄な時間はかけない」ということであった。
その後、金融行政の指導法が変わった。行き詰った企業に対する迅速な再生指導スキームが確立したのである。企業の行き詰まりを私的整理に移行して金融機関は債権カットを進める。さらに関連債権会社へ圧縮した債権を転売させる仕組みである。確かにこのスキームのお陰で再生できた企業の例も続出した。しかし、「こんな会社を債権カットしてまで支援する価値があるのか」というケースもある。最近の例では久留米市の本村商店(酒店)が該当する。

福銀、M&Aコンサル代を得る

 高木工務店支援の失敗で「無駄な時間の浪費は阻止する」ことを教訓化した福銀は、九州建設支援プロジェクトを練りあげた。つまり、(1)迅速、スピード短期間でV字回復する(2)最大級の人材を投入する(3)出口戦略を明確にする、の3点であった。(1)では資料の業績推移からわかるように、09年、10年2期で赤字の膿をすべて出し切った。11年期から利益をあげるまでの短期決戦に勝利したのだ。16年期は税引後利益4億円まで叩きだすようになった。短期間で再生できたのは高額の不動産を所有していたからだ。特に東比恵の不動産が莫大な売却益を得て再生に貢献した

 (2)最大級の人材登用は山内氏のこと。ここでは省略する。そして(3)出口戦略の明確化である。分かりやすく述べると経営骨格をどうするかというテーマだ。要は辻家に経営を託すのか、他社の資本を導入するかという経営の根幹に関わる問題である。すでに多少触れたが、10年7月に社長に復帰した時点で長英氏は出口戦略=企業売却を検討していたということも耳にした。もちろん、福銀との相談を繰り返していたことは言うまでもないことだ。

 今回、福銀がどうやって徳倉建設を探し当てたのかについての裏は取れていない。金融機関のM&Aのコンサルフィーは相場が売値・買値のそれぞれ10%となっている。「今回、27億円のキャッシュが動いただろう」と推定した。そして福銀が売り買いを単独でまとめたとする。そうなると10%が倍の20%になる。27億円×0.2(20%)=5.4億円のコンサルフィーが転がり込む勘定になるが、これが真相であれば福銀はめでたしめでたしとなる。現実はそう甘くないだろう。だがしかし、今回の九州建設再生・M&Aの成功は福銀にとって快挙といえる。

金融機関M&Aの明暗

 福銀のM&A部門のスタートは部長の下に3名のスタッフがいた。2000年前後にある会社が住宅会社を4,000万円で買収した。フィーを10%払わされた。手放した側は「福銀さんにはお世話になっていない」という理屈でフィーの払いをしなかった。この経営者が体験に基づいて語る。「銀行との力関係で値引きを強要する企業もある」と。となると20%のコンサル代を簡単に掌握できるとは限らないのである。16年経ってこのM&A部門は、現在福銀内の重要なポスト=出世頭を輩出する組織になっている。
暗のケースでいえば銀行のお粗末さで大型案件が流れたこともあった。2000年に寿屋とサンリブの流通大型合併が水面下で進んでいた。段取した銀行の担当者が思わず口を滑らしたことで破談となった。寿屋潰れてサンリブは流通大編成の波に乗りこまれた。この暗のケースの場合はまだ金融機関がM&Aに対して未熟な時代に起きたものである。

 しかし、最近でも金融機関担当者の無責任さが横行している例もある。ある建設会社の社長は今でも怒り心頭だ。ちょうど1年前の3月に「会社を買う」という話をメインバンクの紹介で進め、大詰め寸前であった。3月20日になって仲介担当の銀行マンが頭掻き掻きやってきた。開口一番、「済みません!!相手がキャンセルしてきました。無かったことにしてください」と悪びれた様子もなく申し渡すのだ。「こういう不逞の輩をM&A役につけるとはけしからん」と激怒するのもよくわかる話だ。それ以降、この会社の業績には精彩がない。

 明の典型は、今回の西部ガスがエス トラストを買収した例である。仲介は三井住友銀行だ。西部ガスは3,145,200株を1株800円で買い取る。総金額は25億161万円になる。普通ならば往復で10%×2=20%になる。それに25億円×0.2=5億円のコンサルフィーが三井住友銀行に転がる計算になるのだが、現実はそれほど甘くない。

 前述したように金融機関と企業の力関係で様相が変わる。とても西部ガスが三井住友銀行に2.5億円払うとは思われない。エストラスト側も「頼み込まれたのだから1円も払っていない」と証言する。どうであれ、今後金融機関にとってM&Aコンサルは美味しいビジネスになっていくのだ。

(つづく)

 
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