民営化断固阻止を狙った商工中金の不正融資(前)
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中小企業のための政府系金融機関、(株)商工組合中央金庫(以下、商工中金)が不正な融資を繰り返していた問題で、経済産業省・財務省などは5月9日、業務改善命令を発動した。商工中金が行政処分を受けるのは初めて。なぜ、商工中金は組織を挙げて不正融資を行ったのか。理由は明々白々。完全民営化への移行を断固、阻止するためである。
数値目標達成のノルマを課す
2016年11月22日、商工中金は鹿児島支店の複数の職員らが取引先の財務諸表を改ざんして不正融資をしていたと発表した。
職員らは、金融危機や自然災害で一時的に業績が悪化した企業向けに低利融資する「危機対応業務」で、意図的に試算表などの数字を改ざんした。危機対応融資が適用されれば、企業は国から支給される利子補給で負担が小さくて済む。日本政策金融公庫が融資の5~8割の保証を引き受けたうえで商工中金が融資する。融資をするには、危機前と比べて売上高などが一定割合減少していることが条件で、不正を行った職員らは融資要件に合うように、売上高や純利益を書き換えて減ったように見せかけていた。
この制度は、低利でお金を借りられる企業にはもちろんメリットがある。一方で商工中金にとっても、融資が焦げ付いても最大8割を国が補償してくれるから、通常の融資に比べて、リスクは格段に低い。危機対応業務で不正融資を行っていたのは、鹿児島支店だけではなかった。
商工中金は17年4月25日、全国35支店の職員99人が融資先の売上高を低くするなど書類を改ざんしていたと発表した。不正は816件、414億円分の融資に上り、198億円は本来融資の対象ではない企業に貸し出していた。
商工中金の外部の弁護士で構成される第三者委員会がまとめた不正に関する調査報告書は、不正があった鹿児島支店について、支店長の融資ノルマ達成の圧力があったと指摘。そのうえで、「不正行為が営業担当者間では周知のこととされ、『みんながやっている』との意識となって行動意識の低下を招いた」と結論づけた。『週刊朝日』(17年1月27日号)は「国制度悪用 商工中金『不正融資』の巧妙手口」のタイトルの記事で、商工中金が営業現場に「ノルマ」を課していたことを明らかにした。
〈半年に1度の支店長会議で、「割当」と呼ぶ数十ページの冊子が各支店長に配られる。本部が支店に与える数値目標で、職員らが不正に走った「動機」だとみられる。目標の一つに「危機対応業務」という、悪用された制度の項目しっかり設けられていたからだ。〉
危機対応業務の数値目標が、なぜ、ノルマになったのか。それが本コラムのテーマである。
(つづく)
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