武田薬品工業、世界製薬メーカーとして生き残れるのか(1)
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条件付きで60%は生き残れる可能性あり
まずは、回答を下そう。武田薬品工業は世界製薬メーカーとして、60%の確率で生き残れる。
ただし、次の条件が保証されることが必要である。その条件とは、長谷川閑史会長(月末で会長退任して、取締役なしの相談役に就く)の持論である「アメリカで、世界で戦える組織づくり」と、「ヒットする製薬を開発できないと明日はない」という危機感を組織全体で保有すること。この条件が保証し続けられることにある。
歴然とした格差がある世界企業と日本企業
世界・日本の製薬会社売上ランキングを参照されたし。世界規模では、フランス企業がトップ、スイス2社、アメリカ5社、イギリス2社と、明確に勢力分布がなされている。もはや後発組がトップに踊り出てくる可能性はない。
日本勢では、武田薬品工業が18位にようやく登場している。あとはアステラス製薬、大塚HDが続いている。トップにあるフランス・ファイザーと武田薬品工業の売上規模の差は3.3倍もあるのだ。
世界ベストテンランキングに入っているスイス2社の売上総額が10兆8,033億円、英国2社が6兆8,274億円、アメリカ5社はなんと17兆8,351億円になる。日本10社の累計売上は7兆7,428億円にしかならない。
アメリカベストテンの総額は類推であるが、5社プラスすれば楽に5兆円が加算されると22兆円を突破する。日本ベストテンの3倍を超える規模の差が歴然となる。であれば、日本企業が巻き返しを図れる秘策があるのか。あるとすれば、開発費の額である。しかし、ここでも歯が立たない。世界第2位のロシュは研究開発費1兆2,685億円(売上対比22.8%)を叩き出している。
日本10位までの開発費総額は1兆3,604億円である。10社が結束して、どうにか太刀打ちできる水準になるのだ。個別各社の比較では勝負にならない。巻き返しの秘策とは、他のライバルを圧倒する研究開発費を投入することであるが、この分野でも歯が立たない。巻き返しの策がない。海外トップ集団と日本製薬会社との差は、開くばかりである。となれば、日本トップの武田薬品工業を含めて、日本企業は海外企業にM&A(呑み干される事態)されるケースも生じることが予想される。
先見の明がある長谷川会長
呑み干されないためには、アメリカ市場で勝負ができ、後進国という市場が急速に拡大している戦線で売上を確保できないと、日本企業の将来はアウトになる。海外の“巨人”から呑み干されるのである。
このような無様な将来の危機を見据えて、長谷川会長は布石を打ってきた。アメリカで稼ぎ、後進国での売上増を果たせる手を打ってきたのだ。この路線の拡大発展を新経営陣が持続できれば、武田薬品工業は海外でも製薬メーカーの雄としての一角を担えるようになるのだ。
(つづく)
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