「『神宿る島』宗像・沖ノ島」世界遺産に推薦
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28日、文化庁の審議会の世界文化遺産特別委員会は、再来年の登録を目指す4件の候補について審議を行った結果、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」を推薦することを決定した。国は暫定版の推薦書を今年9月末までにユネスコに提出。その後、再来年(2017年)の世界遺産委員会で審査されることになる。
今回、世界遺産への推薦が決まった「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、福岡県宗像市の沖ノ島を中心に、宗像大社や福津市の新原・奴山古墳群などの5つの資産で構成される遺産群である。「沖ノ島」は、九州と朝鮮半島とをつなぐ海域、玄界灘の真ん中に浮かぶ島であり、“神宿る島”として古代から篤い信仰により守られてきた。
沖ノ島での祭祀を奉斎した宗像氏を中心とする海の民は、九州本島から朝鮮半島に向かう海の道「海北道中」を守る宗像三女神を信奉し、沖ノ島の「沖津宮」、大島の「中津宮」、田島の「辺津宮」の三宮からなる島伝いの壮大な「宗像大社」を成立させた。島全体が御神体とされており、今でも女人禁制の伝統を守っているほか、男性でも毎年5月27日以外の上陸は基本的に許されず、その数も200人程度に制限されている。なお無人島ではあるが、現在は沖津宮の神官が交代で派遣され、常時滞在している。
「海の正倉院」とも称される同島から発見された国際色豊かな品々を含む約8万点の遺物は、大和王権およびその後の律令国家が、沖ノ島祭祀に強く関与していた事実と、中国大陸・朝鮮半島との交流の歴史を如実に証明している。「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」では、前述の沖ノ島と宗像大社のほか、古墳時代に沖ノ島周辺の海域を支配し沖ノ島の古代祭祀を執り行った豪族・宗像氏の墳墓群である「新原・奴山古墳群」が加えられている。これらは、日本における国家形成期以降の500年間にわたる祭祀の変遷過程を確認できる資産であり、東アジア世界における海を介した古代祭祀のあり方が、規模・内容ともに最もよく保存されている唯一の例となっている。
昨年データ・マックスが行ったインタビューで、宗像市長の谷井博美氏は、世界遺産登録への活動を、宗像地域にある貴重な自然や文化財を守っていこうとする意識を高める手段として行っていると語っている。この活動を契機に、宗像市民が宗像の歴史や自然により関心を寄せ、文化財愛護の醸成を図ること、また、あまり知られていない沖ノ島の神聖性を人類共通の財産として守っていくことを最大の目的としている。
宗像市では、世界遺産登録に向けては06年より本格的な活動を開始。認知度を上げるため、各地でシンポジウムを開催するなどして、国際的な価値の確認や国内の認知度アップを図ってきた。その結果、09年1月には、ユネスコ世界遺産暫定リスト記載が決定し、それを受けて「『宗像・沖ノ島と関連遺産群』世界遺産推進会議」を設置。登録に向けての啓発や推薦書作成のための学術調査・研究を行ってきた。今回の推薦を経て、17年に世界遺産に登録されると、「宗像・沖ノ島」は広く世界に知られることになる。それにともない、観光需要は増えることが見込まれるのだが、また同時にリスクをともなうことも否めない。宗像・沖ノ島の場合は、禁忌に包まれた“神宿る島”の神聖性をいかに保てるかが、今後の最大の課題となるだろう。
【坂田 憲治】
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