2024年11月06日( 水 )

大企業の相談役・顧問制度は「院政」の温床だ!(前)

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 大企業の相談役・顧問制度は、終身雇用や年功序列といった日本型経営の象徴といえる。退任した社長・会長は、社内の慣例として相談役や顧問に就く。報酬は平均2,000~3,000万円。専用車、個室、秘書の「三点セット」と厚遇が約束される。
 政府は2018年初頭をメドに、上場会社の社長が相談役や顧問に就任する際、氏名や業務内容などを開示するよう義務付ける。経営や人事を左右する「院政」への批判が強まるなか、相談役・顧問制度が問われている。

三菱UFJ銀頭取の唐突な退任劇の背景に、会長と相談役の対立

 『週刊ダイヤモンド』(7月29日号)の「頭取を辞任に追い詰めた!?三菱UFJを牛耳る『影の権力者』の正体」という記事が目に止まった。三菱OBによる「院政」を告発した内容だ。
 5月24日、(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の(株)三菱東京UFJ銀行(BTMU)の小山田隆頭取の退任が発表された。16年4月に頭取に就任したばかりで、1年での退任は極めて異常。体調不良という退任理由を、額面通り受け取る向きは皆無。退任をめぐって、さまざまな情報が飛び交った。なかでも、小山田頭取が板挟みで苦労していたと言われたのが、平野信行会長と永易克典相談役の対立だ。

 『週刊ダイヤモンド』は、頭取退任劇の舞台裏をレポートしている。

〈BTMU本店9階には応接室や会議室、役員食堂の他に、歴代頭取経験者の個室がある。(中略)小山田前頭取の2代前の頭取である永易克典相談役、3代前の畔柳信雄特別顧問、4代前の三木繁光特別顧問(東京三菱銀行)、5代前の岸暁特別顧問(東京三菱銀行)、7代前の若井恒雄特別顧問(三菱銀行)の5人だ。6代前の頭取は既に鬼籍に入っている。
 この9階メンバーを中心に構成されるOB会は、銀行経営に影響力を持つとされる。〉

 同誌によると、BTMUが誕生して以降の頭取は、三菱銀行出身者が独占。9階に個室を持つ特別顧問も全員が三菱銀行出身。三和銀行出身など外様の特別顧問は、旧東京銀行本店の日本橋別館に追いやられているそうだ。9階の権力者と、平野会長が行名変更で対立した。

〈5月に発表されたBTMUの行名変更をめぐって、平野会長は「MUFG銀行」にする方針だったが、「三菱」の名前を外すことにOB会が大反発。結局、「東京」を外して「三菱UFJ銀行」に変更することで落ち着いた。〉

 三菱ファーストのOBたちは、「三菱」の冠に固執した。将来、UFJも消して「三菱銀行」に戻すことが狙いなのだろう。

 抗争の根柢には、平野氏が、金融庁が進める相談役の仕事内容や個別報酬の開示をテコに、永易氏ら相談役の影響力排除を狙っていたという見方がある。OBたちは猛烈な巻き返しに出た。平野会長と永易相談役の対立の板挟みで、小山田頭取が辞任に追い込まれたというわけだ。相談役・顧問の「院政」パワーをまざまざと見せつけた。

(つづく)

 
(後)

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