1年4カ月ぶりに家族が再会~佐世保児相に突然引き離された親と子(6)
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長崎県・佐世保児相もう一つの「闇」
2014年3月31日の日曜日、友達と遊んでいた自宅近くの公園から、佐世保市職員にタクシーで連れ去られ、そのまま佐世保こども・女性・障害者支援センターの児童相談所部門(以下、佐世保児相)で一時保護とされていた当時小学2年生の男児が8月4日、1年4カ月ぶりに家族と再会した。男児は、佐世保児相内で、両親と姉、2人の弟と面談。その後も、形式を変えて家族との面談が行われている。
一時保護に関連して、男児を連れ去った佐世保市職員、児相職員は男児の家庭を訪れ、調査することはなかった。虐待をしていたことを認めなければ子には再会できないという児相側に、男児の両親、親戚、事情を知った児童委員、医師らは反発。家族側は、家庭への調査を求めたが受け入れられず、話は平行線をたどった。その一方で、佐世保児相では、昨年7月に起きた高1女子同級生殺害事件(佐世保事件)に関連して、事件前にあった加害者の少女の主治医(精神科医)からの相談を、事実上無視していたことが大問題となった。
佐世保事件を未然に防ぐことができなかった佐世保児相の対応などについて、検証を行った有識者や専門家からは、「専門性の欠如」という厳しい指摘がなされた。佐世保児相における面談で、子を取り戻すため、必死になって関連法を勉強していたという母親は、「担当職員の説明のなかで、児童福祉法に関する間違いもあり、それを指摘すると調べに行くことがあった」と、証言する。長崎県議会では、早急な人事の刷新とともに、他の事案における不適切な対応がなかったかについて調査を求める声もあがった。
「捨てられたと思っていた」
佐世保事件以外の事案に関する調査・検証については公表されていないが、今年の春、トップをはじめ、佐世保児相の人事が一新した。新任のセンター長は、前任者たちが残した案件の後始末か、不眠不休で働いているとも聞く。男児の家族への対応も改善され、家族側の言い分にもだいぶ耳を貸すようになったようだ。6日、児相内にある子どもが遊べるプレイルームで家族は3時間ほど面談。久しぶりに姉弟と遊んだ男児は、両親に尋ねた「いつ帰れるの?」。
7日、午後2時から午後6時まで、男児は母親と2人で外出することが許された。だいぶ打ち解けて話すようになった男児は、「捨てられたと思っていた」と母親に話したという。佐世保児相が委託していた施設では、右足の付け根部分を疲労骨折する災難にも見舞われた。「(家に帰りたいという)自分の意思は表明してきた」と、母親に語ったという男児。「別れの度に涙を流します」と母親。家族は男児が家に戻る日を待ち望んでいる。
【山下 康太】
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