シリーズ「北九州・地域潜在力で創る未来」 逆風を逆手に~井上市議会議長
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ろくな評価がない
『人口減のキタキュウシュウ』というイメージは幅広く流布し、すっかり定着している。別表の通り、人口は1980年の106万5,078人をピークに2015年には96万1286人となり、およそ10万人減少している。「日本の将来を暗示した先行指標を体現している北九州市」という、汚名なのか評判がよいのかわからない評価が定まっている。とにかく人口減は地域を暗くするものだ。暮らす皆が「これでは明るい未来はないな」と言い訳がましくなってしまう。
加えること、「北九州市はヤクザの町。おお怖い」という悪名が全国津々浦々に飛び交っている。あれだけ新聞・テレビで報道されれば、「ヤクザの都市」というイメージが定着していることも納得できる。しかしヤクザ都市の問題はいずれ解決できるであろう。
この北九州環境の逆風を逆手にとって『ルネッサンス・北九州市』を叫び、その実現に挑戦している地方議員がいる。井上秀作・北九州市議会議長である。詳細はこのシリーズ「北九州・地域潜在力で創る未来」で報告するが、一番注目したのは「逆風でも前進できる」というスピリットとその方策であった。
ハンディキャップを逆手に
井上議長のこの『ルネッサンス・北九州市』達成へ向けた11の政策がある。「北九州市は老人の街」という特性を逆手にとって「老人に一番住み易い街」を謳う。現実に北九州市は老人にとっての快適なインフラ整備が蓄積されてきた。この実績を売り物にしているのである。着実に老人、つまり定年退職者および予備軍の方々の転入実績を積み上げてきている。この発想の転換はさすがだ。
さらに、響灘地区、曽根干潟の埋立地沖合では、洋上風力発電の強化策を推進している。いずれは北九州市の住民の使用電力を賄うまでの発電能力となるであろう。単に「再生エネルギーの街」をアピールすることが第一義ではない。風力発電にはさまざまな部品の組合せ能力が必要とされる。ここで生きるのが、モノづくりの街・北九州市が営々と積み上げてきた「産業用部品作りはお手の物」といわれる製造能力の資産だ。この資産の活用にプラスして、さらに市場を拡大していこうという魂胆もある。この風力発電のモデルを「全国へ、世界へ広げる」ことだ。
もう一つの潜在力は北九州空港である。ポイントは3つ。まず(1)24時間稼働ができるという有利さ。次に(2)関門海峡浚渫土砂を埋立用土として北九州空港敷地拡大に活用しているということだ。関門海峡の浚渫によって出る土砂は年々増加し、埋め立て地は広大な面積になっていくと予想できる。さらに、(3)海外からの観光客の増大である。中国、韓国の次は、ベトナム・フィリピン・インドネシアで中産階級が育成される。この層が近いうち(5年以内)に、日本へ押し寄せてくるであろう。航空機を捌く能力に限度のある福岡空港は、早晩パンクする。インバウンド需要に対して北九州空港が本格稼働を求められるのは時間の問題である。
成功体験の数を増やす
北九州市にも探せば成功体験の見本はある。小倉駅北側の開発は過去において何度も手がけられたが、すべて不成功に終わった。ところが2012年に「あるあるCity」が生まれて若者たちが集まってきたことで街の光景が様変わりした。今年は利用者が300万人を突破する勢いである。この「あるあるCity」のような成功体験を増やしていけば関係者にも活気を与える。若者たちも自信をもって挑戦する風土が岩盤のように強固になっていくであろう。
ここで福岡市民へ告知しておこう。
「北九州市へ一度、二度と足を運びましょう。素晴らしい場所がたくさんありますよ!!」と。
福岡の人間の一部には、北九州を見下げる輩がいる。この思い込みは一般人にだけではなく、経営者層にも存在している。アジア・世界にアピールできる国際都市になるには、福岡・北九州の連携とその規模の有効活用が条件・不可欠になる。この視点を忘れずに。
井上議長は「議長就任期間に人口減に歯止めをかける、イーブンにする」と宣言された。「逆風のなかで、もう無理」というのが一般人の行動パターン。そこに逆張りして、目的を完遂しようとする堅い意志と確かな戦略を見習う必要がある。今後のシリーズで紹介する。
(つづく)
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