2024年12月27日( 金 )

広告大手アサツーディ・ケイ絶体絶命!前門の英WPP、後門の米ベインに挟み撃ち(前)

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 広告代理店国内3位のアサツーディ・ケイは、絶体絶命の窮地に陥った。世界最大の広告グループ英WPPと縁切りして、米投資ファンドのベインキャピタルに乗り換える。表門で虎の侵入を防いでいるときに、裏門から狼が侵入してくる。「前門の虎、後門の狼」の故事さながらの展開となった。

ADKが英WPPに三下半をつきつける

 (株)アサツーディ・ケイ(以下、ADKと略)は10月2日、英WPPグループとの資本提携関係の解消と、米投資ファンド・ベインキャピタルの買収提案を受け入れると発表した。
ベインはADK株のTOB(株式公開買い付け)を実施。1株当たり3,660円で買い付ける。総額は最大1517億円。9月29日のADKの株価終値を15%上回る価格。買い付け期間は10月3日から11月15日まで。ベインはADK株の100%取得を目指しているが、TOB自体は50.1%以上の応募があれば成立する。東証1部に上場しているADKはTOB後に上場廃止。ADKはベインの傘下に入る。
 WPPのADK株の保有比率は24.74%(17年6月末時点)。ADKもWPP株を2.43%保有しており、提携関係の解消に伴い同株を全て売却する予定だ。

〈ADKは14年以降、合意の上での提携解消を目指してきたが、日本での足がかりを失いたくないWPPは首を縦に振らなかった。そうしたなか、ベインから非上場化スキームの提案を受けた。〉(日本経済新聞電子版10月2日付)

 ベインはTOBを実施してWPPに退場してもらう。ADKをいったん非上場化したあと、3年後をメドに再上場して、ベインは資金を回収するというシナリオである。
 WPPからベインに乗り換えることにしたADKは、WPPとの資本提携の解消に向けて強硬手段に打って出た。これにWPPは猛反発した。
 英国メディアは、WPPはTOBに応じない意向と伝えた。続いて第2位株主の英運用会社、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズも、ベインによるアサツー買収に反対すると表明した。ベインが提示したTOB価格が著しく安いという。シルチェスターはADK株の17.11%を保有(17年6月末)。両社合わせての保有比率は41.85%。
TOBの成立には50.1%以上の株主の応募が必要。ADK株の6日の終値は3,850円と、TOB価格の3,600円を上回る。ベインがTOB価格を引き上げるという期待から買われた。

最終利益を上回る配当を続けてきた

 アサツーは1999年に(株)旭通信社と第一企画(株)が合併して誕生した。同時に英WPPと資本業務提携を結び、出資を受け入れた。世界最大の広告会社の後ろ盾を得て、国内広告業界の2強、(株)電通と(株)博報堂に対抗するのが狙いだ。
 ADKは約20年近く寄り添ってきたWPPと離婚して、なぜベインと再婚するのか。
 理由ははっきりしている。WPPのカネ喰いぶりにADKが音を上げたということだ。アサツーは配当を大盤振る舞いするケッタイな会社として知られている。2011年12月期決算以来、異常な高配当を実施してきた。
 純利益が10億円の企業が、3億円を配当に回す場合、配当性向は30%となる。日本企業の配当性向は30%前後が多い。ところが、アサツーの配当性向は100%を超える。最終利益以上の金額を配当に回しているのである。配当性向の推移を見てみよう。

 アサツーは特別配当を加算して、配当金を跳ね上げてきた。14年12月期に至っては、特別配当526円を実施し配当金は571円、配当性向は646.5%。稼いだ純利益の6.5倍の配当を支払っている。気前の良いばらまき配当だ。株主還元を錦の御旗に押したてる外資系投資家からの圧力があったことは想像に難くない。彼らには、配当を払うのに無い袖を振るのがいい経営者で、しっかり内部留保にため込む輩が悪い経営者だ。

(つづく)

 
(後)

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