新たな福利厚生の仕組みを確立 「びずめし」で企業と地域経済の還流を促す(前)
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Gigi(株) 代表取締役 今井 了介 氏
Gigi(ジジ)(株)が提供する「ごちめし」はオンラインで飲食店のメニューを贈れるギフトサービス。このシステムが姿を変え、2021年2月に登場したのが「びずめし」だ。企業がさまざまな方法で社員の福利厚生制度を整えていくなか、変化する働き方に対応したサービスとして、福岡の大手企業でも導入されている。このサービスはどのようなものなのか、同社代表取締役・今井了介氏に話をうかがった。
東日本大震災で気づいた「音楽では救えないもの」
──音楽家である今井代表がフードテック(※1)というまったく別の分野で起業されたのはなぜでしょうか。
今井了介氏(以下、今井) 私は約20年以上、音楽の仕事に携わり、作詞や作曲、編曲、プロデュースなどを生業としてきました。しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに「エンタメや音楽だけでは人を救うことができない」ということに気が付きました。いくら私たちが音楽をつくっても、飢えも寒さもしのげません。移動手段にも、住む場所にもならないのです。
衣食住のなかでもとくに「食」の領域に非常に関心があったことに加え、ウェブやITの分野が好きだったことから、飲食にまつわるプラットフォームをつくることはできないかと考え、起業に至りました。
──どのようなプラットフォームになるのでしょうか。
今井 当社のサービスに登録した飲食店はこのインターネット上にお店のメニューを出すことができ、これを見た誰かが料理を購入し、デジタルチケットを授受します。このデジタルチケットを誰かに送ることができます。
すべてのサービスにおいて「誰かから誰かへ贈る」という基本軸をもっていて、当社で最初に始まった「ごちめし」は個人から個人へのギフトサービスになります。
このベクトルが「飲食店支援者から飲食店へ」となるのが「さきめし」です。これはコロナ禍における飲食店支援を目的としており、緊急事態宣言で休業や時短営業を余儀なくされた飲食店に対してお金を先払いしておくことができます。
3つ目に登場したのが「びずめし」です。会社から社員に対して飲食店利用チケットを発行し、社員は街の飲食店を社食として利用することができます。
そして来年、本格始動するのが「こどもごちめし」です。子どもたちが子ども食堂を利用するように、支援者が飲食店を通じて食事を提供する仕組みを構築しています。
支援やプレゼントとして、誰かがお食事のチケットを購入し、誰かに渡すという共通のコアシステムを、さまざまなかたちに置き換えてサービスを展開しています。
変化する時代に合わせた食事補助の仕組みを
──2021年にスタートした「びずめし」は会社の福利厚生の新しいかたちです。
今井 先述したように、サービスを利用している企業の社員は街中の飲食店を社食として利用することができ、企業はその社員が食事した1カ月の総額とその総額に対して10%のシステム手数料を当社にお支払いいただくというかたちになります。
すでに世の中にはさまざまな福利厚生サービスが存在していますが、サブスクリプションの場合、使っても使われなくても企業として支出は変わらないというケースが非常に多いです。これらのサービスとは違い、びずめしは利用した回数のみに比例した請求となります。
これまで食事補助といえば社員食堂が主流でしたが、時代が変わった今となっては時代遅れとなりつつあります。複数の拠点を持つ企業の場合、社食のある場所とない場所では格差が生まれたり、営業マンとして日中働けば働くほど社員食堂が開いている時間帯に会社にいられなかったりします。それだけでなく、リモートで働く人も社食の恩恵を受けることができません。働き方が多様化していく昨今、従来の食事補助では対応しきれなくなってしまったのです。
社員食堂を併設できる企業となると、ある一定以上の規模をもつ企業になります。このような企業はCSRとしてSDGsについて強く意識をされていますが、社員食堂が有効に使われないという状況が発生すると、それがフードロスの元凶となってしまうケースもあります。
そのほか、企業の福利厚生の充実という意味では、働きやすさや働きがいにならび、この食事補助の仕組みが仕事に励む理由にもなります。社員満足度の拡充や離職率の低下を図ることができ、地域の企業が地元の飲食店を利用するサイクルを生み出すという意味で地域経済への寄与も可能にします。
──登録店舗はどのようにして増やされているのでしょうか。
今井 ウェブサイトから飲食店がご自身で登録が可能ですが、「びずめし」においては、リファラル(紹介・推薦)で登録店舗数を増やしている状況が多いです。
たとえば「びずめし」に登録した企業の方が普段懇意にしている飲食店へ当社のサービスへの登録を促すケースがあります。このとき、飲食店側への負担がないシステムであれば、企業・社員側からも声をかけやすいと思います。
当社のサービスにおいて、飲食店におけるサービス導入費用などの手数料は一切かかりません。「ごちめし」ではデジタルギフトを送る側から、「びずめし」ではサービス利用企業から食事代の10%をプラットフォームのサービス料としていただいており、お店への負担が少ない仕組みとなっています。利用する社員にとっても自分が食べたいお店が社食になってくれると嬉しいと思いますし、それだけでなく、地域の経済を巻き込んだ共存共生を可能にしてくれます。
※1:フードとテクノロジーを組み合わせた造語。飲食領域におけるDXやIT化、IoT導入などを指す。 ^
(つづく)
【杉町 彩紗】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:今井 了介
所在地:福岡市中央区大名2-6-11
設 立:2018年9月
URL:https://www.gigi.tokyo/
<プロフィール>
今井 了介(いまい・りょうすけ)
1971年11月東京生まれ。作曲家・音楽プロデューサーとして、14組のアーティストが一堂に会し東京オリンピックに向けて歌われたコカ・コーラ社の公式ソング『Colorful』(2021年7月リリース)の総合プロデュースを務めた。安室奈美恵『Hero』や、TEE/シェネル『ベイビー・アイラブユー』なども手がけ、作家・プロデューサーのエージェンシー(有)タイニーボイスプロダクションを創業・主宰。東京・LA・シンガポールに拠点を構え、ワールドワイドに活躍中。法人名
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