2024年11月22日( 金 )

【福岡市長選】期待も相半ばする市民の思い

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福岡市 イメージ    福岡市は、九州最大の都市であり、その行方を大きく左右する市長選は高島氏の再選で終わった。天神ビッグバンで慣れ親しんだ風景が一変。都市の成長は進んだが、地域交通や教育、子育てなど課題は多い。市長選に対する受け止め方も、立場によってぞれぞれの問題意識がある。その思いを聞いた。

 福岡市内で自営業を営む男性は、現職ではなく、新人に投票した。

 「現職は、目立つ政策はやるが、広い市民のためになるのか、福岡城の再建や町屋など文化財の振興をしてほしいですね。うきは市の吉井地区や八女市などは古い街並みを保存していますが、福岡市も、歴史を大切にすべきです。また交通政策では、地下鉄七隈線も、橋本から姪浜をつないで、環状線にすべきではないでしょうか。地下鉄を山手線みたいに一周させる、あるいはマリノア方面に接続させると利用者は増えると思います。早良区の原も住民が多いエリアですが、七隈線が開通して、次郎丸周辺の地価もあがっています。今の橋本終点だと、わざわざそこに行く用事がある人は少ないと思います」。

 多くの市民の間で、七隈線の終点が橋本駅で止まっていることへの不満の声が聞かれる。福岡都市高速は環状線があるが、地下鉄も東京の山手線のように環状線にすれば、利便性も増し、沿線人口も増えることが予想される。高島氏も、一夜明けた21日午前、古巣の地元民放の番組に出演し、地下鉄の延伸に言及していた。

 高島市長が公約に掲げた子育てや教育の充実はどうか。子ども食堂や学習支援に取り組むNPO法人の理事長の男性は、福岡市政について期待する。

 「市長選挙の政策論争は見えにくかったですが、バランスとして高島さんの方がいいと思います。福祉政策は注力された印象です。子どもの貧困政策に関してはまだまだ課題があると思います。日本全体が悪化しています。福岡市はほかの地域よりはまだいい方だと思います。泣いている子どもが1人でもいたらいけないので。高島市長が、当選後のコメントで子ども政策と団地(市営住宅)について言及されたのは、市民に対して明確なメッセージを感じました。財政も健全化され、4期目では子ども政策について明確に打ち出していかれるのかなと思います。3期目では、災害対策がスピーディーになったことと、高齢者施策の部分、地域包括ケアについて、福岡市はかなりうまくいっているように思います。先人の知恵かもしれませんが、自治協議会や公民館を中心としたプラットフォームづくりで、地域コミュニティが形成されています。福岡市は児童館などをあまりつくらず、公民館主体に行っていますね。高島市長に対する、子ども政策に関して期待は大きいです。」

 20代で理学療法士をしているAさん(女性)は次のように語る。

 「高島さんの市政に私はものすごく不満があるわけではないです。アイランドシティの構想が桑原市長のときに発足して、行き詰まっていたなか、今の状態にまでもっていけたのは高島市長だったからだと思います。ただ、福岡市は政令指定都市であるからこそ、子育て、教育、福祉に積極的に手を入れられるはずなのにそこを今までしなかったことを懸念しています。しかし、今回の公約では子どもに目を向けるとのことだったので良かったと思います。」

 一方、評価しながらも、これまでの市政で不足している部分を指摘する声もあった。福岡市内に事務所を構える弁護士(男性)は、次のように語った。

 「福岡市長選についてですが、4年前に福岡にきて、一年足らずでコロナでしたので、市政についてはよく分からないというのが本音です。高島市長はテレビ出身ということもあり、見栄えが良く、書籍の売上も好調なようですので、表面的なイメージは悪くありません。ただ、天神ビッグバンははたして必要なのか疑問です。開発をやるのならペイペイドーム辺りまで地下鉄を伸ばすなどしていただけたらと思います(交通の便が悪すぎ)。スタートアップ支援も大変良いのですが、将来性のある分野とか生活密着した分野に重点的に助成した方が良いような気がします。あと元佐賀市長・木下氏が話しておりましたが、福岡は人口が多いが、学生と老人ばかりです。言われてみたらそうだと思いました。地場産業の育成と福岡へのUターン、少子化対策は連結して考えないと解決しないような気がします。」

 高島市長に対して、辛辣な声もあった。福岡を中心に、企業や地方自治体でのマーケティングコンサルティングを行っている男性は次のように語った。

 「私が親しくしている市役所OBとか私の周りの50代~70代くらいまでの中小企業経営者とかある程度、客観的に見える人たちからは高島氏の評判はすこぶる悪いです。自民支持者からも。夢のありそうな明るいテーマの時など、いい顔をつくれるときは積極的に出てくる一方で、地道に取り組まねばならない現場が苦心している課題にはほぼ引っ込んでいるようですね。高島市長はKBC時代からマスクもいいし、弁も立つことから婦人層、言わばオバ様方の強い支持を得ていると見ています。今回は投票率の低さにも現れましたが、立憲民主の候補が市民連合として共闘できたとしても、いかに市民の関心が低かったかが見て取れます。

 国政においてあの体たらくの自民党に対抗する野党第一党すら、国民の支持を得ていないことが市長選でも影響していると考えられます。いざ選挙となっても地方都市では、どうしていいかわからない一般市民が大勢であるというのが、この結果ではないでしょうか。」

 進藤一馬市長と並ぶ4期目となった高島市長に対して、期待する声、批判する声とその賛否が分かれた。基礎自治体による行政施策は、市民の暮らしに大きく関係する。「次の世代、次のステージのために挑戦し、大きな夢を描ける街にしていく」と決意を語った高島市長の取り組みに注目したい。

【近藤 将勝】

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