「地域包括ケアシステム」と「ぐるり」の人たち(後)
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大さんのシニアリポート第35回
「地域包括ケアシステム」実質稼働の背景にあるのは、地域医療機関の再統合、つまり棲み分けだ。重度の要介護者になれば、受け入れ先(病院・介護施設)の変更を余儀なくされ、主治医が替わる。軽度な要介護者までは掛かり付けの主治医、重度な要介護者は訪問看護士(医師)や介護施設を有する医療機関とに棲み分けられるだろう。後者が「地域包括ケアシステム」の担い手となる。主治医→地域医療の核となる医療機関へ。患者の移管はカルテの移管にもつながる。スムーズに移管できることを願わずにはいられない。もっとも要介護予備軍は後を絶たない。両者間で患者の取り合いが起こるとは考えられないが。
8月9日に行われた埼玉県知事選に、上田清司知事が「4選不可条例」を無視して敢えて挑み、勝利することができた。上田が掲げた公約のトップに、「地域包括ケアシステムの実行」がある。埼玉県は全国有数の高齢化率を誇る。公約のトップにこれを掲げたことが、勝利した一因だと考えられている。実は、起案者である「さわやか福祉財団」に協力を要請したというまことしやかな噂が流れた(真偽のほどは定かではない)。確かに、知事選以前に埼玉県と「さわやか福祉財団」との間で「地域包括ケアシステム」支援の契約が交わされ、7月に埼玉県が各市町村の担当課長に、「生活支援体制整備事業の実施に係わる個別支援」の要請書を出すという事実は存在する。本市の首長も「上田支持」に回った。10月には市長選挙も控えている。6月の広報誌に、「地域包括ケアシステム」の本格稼働を唐突に載せたのも納得がいく。「地域包括ケアシステム」の本格稼働を熱い目で見守る政治家と医療機関、その動きを巧みに見極める行政。したたかな顔が見え隠れする。
(了)
<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。関連記事
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