2024年11月25日( 月 )

第20回共産党大会後の日中経済の展望

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代表取締役社長 徐 静波 氏

中国式現代化 イメージ    11月15日夕方、日本銀行の元国際局長である大阪経済大学の福本智之教授、日本貿易振興機構(JETRO)で上海事務所長を務めた小栗道明本部総務課長とともに、「第20回共産党大会後の日中経済の展望」と題したオンライン講演会を実施した。100人以上が訪れたなか、日本企業の中国現地法人の代表者も多数参加していた。

 共産党大会が閉幕して1カ月経った中国はどのように変化しただろうか。

 まず、習近平主席が3年ぶりにG20首脳会合に出席し、アメリカのバイデン大統領、および岸田首相と初めての会談をして、開放的な姿勢や主要国との対立を解いて理解や協力を求める決意をアピールした。

 次に、新型コロナウイルスの感染対策を改めた。「ゼロコロナ」は維持するものの、入国者に対する隔離期間を「ホテル7日間十自宅3日間」から「ホテル5日間十自宅3日間」に短縮したほか、「ロックダウン」は求めずに規制範囲を縮小する「正確な防疫」というかたちにした。

 それから、「中国式現代化」という新たな国造りを打ち出し、市場の全国一本化を手がけ始めている。

 現在、日本企業が中国進出をする際の目安として最大の決め手となっているのが「中国はいつ台湾に武力行使をするのか」といったことである。

 ロシアがウクライナに軍事侵攻したことで西側諸国がこぞって口シアに経済制裁を発動し、この結果多くの日本企業が莫大な損失を蒙って相次ぎロシアから撤退している。

 14日夜に行われた米中首脳会談で、習主席はハイテン大統領に対し、「平和的な統一、一国二制度」の基本方針を堅持し、最大の誠意、最大限の努力で平和的統一を目指すときっぱり述べた。ただし「国家分裂防止法」に定められた3種類の深刻な状況が発生した場合は事を運ぶ、とのことである。中国は台湾海峡の平和や安定を強く望んでいることを示したのだ。

 会談後の記者会見でバイデン大統領は、台湾問題に関する質問に対して、「今回の会談から見て、習主席がすぐに台湾と戦争を始めることはあり得ない」と述べた。

 これらの情報により、中国は台湾との平和的な統一を求めており、「独立宣言」などのやむを得ない状況となった場合にのみ武力行使をする、ということがわかる。

 よって日本企業は当面、中国市場や中国への投資を考える際に、「中国はいつ台湾に武力行使をするのか」といったことを判断材料とする必要はない。

 また党大会を終えて、中国経済はどのように変わっていくのだろうか。

 まずは「中国式現代化」の目標や中身に目を向けるべきと考える。今回の党大会で掲げられたとくに重要な目標であり、中国式経済の新たな枠組みであるこの「中国式現代化」に基づいて、「公有経済」の割合が拡大し、「国営優先策」が避けられない見通しである。日本企業にとって、国有企業との付き合い方により中国での成長具合が左右されることになる。

 次は「市場の一本化」である。この取り組みは小売業や物流業の市場体制や構造にじかに影響を与え、日本企業の商品の中国での流通や販売ルートにもおよぶものである。

 以上の2つの変化については、今回の「中国経済新聞」で特別報道をした。

 中国の経済や市場がどのように変わろうと、外国企業は引き続き中国で歓迎されるはずだ。なぜなら中国はまだ「外国企業は不要」という時代には至っておらず、外国企業の技術や輸出を必要としている上、大量の社員を採用してくれることで深刻な就労問題を解決するめどが立つからである。

 しかるに中国がこれからも経済成長をするにあたり、日本企業の存在がやはり大切なものとなる。技術や経済面で長らくアメリカと対立している中国は、技術や先端部品の日本への依存度が強まる一方と見られる。

 一方、福本教授、小栗課長は「第20回党大会後、中国の政治、経済がどんなかたちで展開するのか、米中関係は本当に改善ができるのかについて、いろいろな不安定要素があるので、一部の日系企業は中国から撤退することもあり得る」と断言。その主な理由を、「一部の産業は現在の中国市場のニーズやスタイルに合わないから」としている。ただし、「残された日系企業がさらに中国事業を拡大し、日中経済の総規模や貿易総額はあまり変わらない」とも分析した。

 中国は今のところ、日本企業に対する新たな需要を見せてはいないが、経済活動が進むにつれてこうした需要も表面化してくる。「中国経済新聞」で、引き続き報道していく。

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