【札幌市長選】五輪招致にこだわる姿勢が透けて見える秋元市長(前)
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今春の統一地方選挙で全国的注目を集めそうなのが、2030年の冬季五輪招致が一大争点となる「札幌市長選(3月26日告示・4月9日投開票)」だ。東京五輪汚職事件が明るみとなり五輪招致に関する札幌市民の調査において反対が賛成を上回るようになる中で、それでも招致断念をしない秋元克広市長と、招致反対を掲げる元札幌市の市民文化局長・高野肇氏ら新人候補が激突することが確実視されているためだ。
秋元市長は当初、非自民の上田文雄市長後継として15年4月に自民推薦候補を破って初当選したが、19年には自公の支援も受けて再選したことから「自民系首長に変貌し、建設業界も歓迎する冬季五輪招致に突き進んでいる」(地元記者)。
実際、秋元市長の五輪招致にこだわる姿勢は12月20日の記者会見からも見て取れた。東京都内で開かれた日本オリンピック委員会(JOC)との共同会見で、筆者が「(札幌市の意向調査で)反対が賛成を上回っても、(五輪招致を)ごり押しする可能性はあるということですか」と聞いても、「民意を尊重するということだ」としか答えなかった。
曖昧な回答だったので「反対が上回れば、中止するのですよね」と再質問をしたが、「民意を尊重するということです」と繰り返すだけ。そこで「はっきり言っていただきたい」と迫ったが、司会のJOC常任理事が質疑応答を打ち切ってほかの記者を指名、秋元市長は事実上回答を拒否したのだ。
この日の共同会見は東京五輪汚職事件の広がりを受け、競技運営体制見直しなどを進めたうえで改めて意向調査を実施する方針を発表するために開かれたものだった。すでに意向調査で反対が多数の民意が出ているにもかかわらず、招致中止の方向性が明確に示されなかったことから、筆者は3日後の12月23日、札幌市内で開かれた出馬会見にも駆け付けた。そして市政記者クラブと秋元市長との質疑応答後、筆者はこう問い質した。
──先ほどの(北海道新聞の)質問で「反対が賛成を上回った場合はそのまま進めることはしない」と仰いましたが、裏返していえば、「見直して市民の意見を反映して進める」と聞こえるが、「何としても招致中止はしたくない」というのが市長の基本的考え方と理解していいのか。何か自民党や建設業者から五輪招致を撤回すると応援してもらえないという密約でもあるのではないかと疑いたくなるが、市長の基本的な考え方を聞きたい。
秋元市長 オリンピック・パラリンピックの招致に関して、札幌市や北海道にとってプラスになるという思いで進めてきている。これまでも二度にわたって市民の意向調査、議会の議論を踏まえて現時点にきている。だから当初から市民の意向を無視して進めていることではなくて、市民の多くが五輪招致をしましょうということに理解を示して進んできているということです。
いろいろ情勢が変わってきているので、改めて今のいろいろな問題についての改革案などを示していかなければ、理解が得られないと考え先般のようなプロセスを踏む考えを示した。先日も「民意を尊重します」と言ったのは、多くの方が賛成ということであれば、今まで通り進めることになるだろうし、仮に、今の時点で仮の話をするのは好ましくないかもしれないが、反対が上回った場合は今までの状況だと前に進んでいけないのではないかと私の政治信条として、申し上げたということです。
依然として中止を明言しない曖昧な回答だった。反対が上回った場合は、いったん立ち止まって改革案を盛り込んで招致を再び目指す道が残されているためだ。もう1つの問題は、意向調査のやり方だ。住民投票なら民意が正確に反映されるが、市のアンケート調査であれば設問の仕方などで賛成を多くする恣意的操作が可能だ。実際、市のアンケートによる意向調査は報道機関の世論調査に比べて賛成が多い傾向があった。この意向調査のやり方についても聞いてみた。
(つづく)
【ジャーナリスト 横田 一】
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