2024年12月22日( 日 )

「理想の住まいへ飽くなき挑戦」を続け、マンション分譲を中核とした総合不動産業へ(前)

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(株)コーセーアールイー
代表取締役社長 諸藤 敏一 氏

 自社ブランド「グランフォーレ」シリーズを中心に、福岡都市圏を中心とした九州各県および首都圏でマンション事業を展開する総合デベロッパーの(株)コーセーアールイー。福岡の地場デベロッパーのリーダーとして業界を牽引しながら、昨年8月に創業30周年の節目を迎えた同社の代表取締役社長・諸藤敏一氏に聞いた。 

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

23年1月期は販売好調で、当初予想から上振れへ

(株)コーセーアールイー 代表取締役社長 諸藤 敏一 氏
(株)コーセーアールイー
代表取締役社長 諸藤 敏一 氏

    ──すでにある程度の見通しが立っていることと思いますが、今期(2023年1月期)の業績はいかがでしょうか。

 諸藤敏一氏(以下、諸藤) 12月8日に発表した23年1月期第3四半期決算短信のなかで触れさせていただいておりますが、23年1月期通期の連結業績は、売上高109億3,900万円(前年同期比3.1%減)となる見込みです。売上高はやや減収となりますが、その一方で利益面は好調で、営業利益15億8,600万円(同38.9%増)、経常利益17億8,600万円(同40.6%増)、当期利益12億1,500万円(同38.1%増)と減収増益での着地を見込んでいます。22年3月に発表した連結業績予想から売上高および利益ともに上振れさせることができたかたちですが、販売が好調に推移したことと、販売が好調だったおかげで販売費の抑制につながったことが主な要因です。

 ──販売が好調だったということは、分譲マンション業界におけるコロナ禍の影響はだいぶ落ち着いてきた感じですか。

 諸藤 日本におけるコロナ禍の影響はまだまだ残っているとは思いますが、行動制限の緩和によって経済活動が戻りつつあることで、今後は景気の回復が期待されます。ですが、その一方で急激な円安や物価上場、ウクライナ侵攻の長期化などのさまざまなリスクが顕在化しており、先行きは不透明だといわざるを得ません。

 分譲マンション業界においては、ウィズコロナの生活様式の浸透や金融緩和の継続によるマンション購入の下支えなどもあったことで、当社でも今期はグランフォーレ西新パサージュ(早良区、39戸)、グランフォーレ大橋駅前レジデンス(南区、83戸)、グランフォーレ日吉レジデンス(久留米市、60戸)などを完売に漕ぎ着けたほか、グランフォーレ箱崎九大前駅レジデンス(東区、37戸)の販売を開始するなど、順調な営業活動を行うことができました。今後もグランフォーレ博多マークプレイス(博多区、66戸)などの販売開始を予定しているところです。

 ですが、円安や物価上昇にともなって建築コストも上昇しており、今後の販売価格への影響も予想され、お客さまの購入可能価格とのミスマッチも懸念されます。来期以降については、決して楽観視できる状況ではないと見ています。

グランフォーレ箱崎九大前駅レジデンス
グランフォーレ箱崎九大前駅レジデンス

動乱のマンション業界 ゼネコンの姿勢に変化も

 ──諸藤社長の見立てでは、住宅ローンの金利は上がるのでしょうか(※取材日:2022年12月26日)。また、その影響はどのように見られていますか。

 諸藤 当然ながら、金利は上がっていくと思いますし、ニュースなどで報じられている市場予測でもそうなっていますよね。当社としては、その金利上昇の影響によって、現在マンションの購入を検討されている方々の購入意欲が冷え込んでしまうことは、懸念しているところです。

 ただし、この購入意欲の冷え込みの懸念については、単に金利が上がるという事態だけでなく、それについての新聞各社や大手メディアの報じ方にも問題があると感じています。

 たとえば、こうした住宅ローン金利の上昇を報じる際によくあるのは、解説者やアナリストの方が、「金利が0.1%上がったら、支払いが百何十万円も増える」などとセンセーショナルに訴えることです。これが問題で、よく知らない一般の人からしてみたら、「年間で百何十万円も上がってしまうのであれば、買うのをやめよう」と思ってしまいますよね。

 ですが、百何十万円上がるというのは、マンション購入費の総額に対してです。たとえば、4,000万円のマンションの35年ローンを組んで125万円ぐらい上がったとしますが、月額にしてみれば約3,000円です。たとえば家賃だって月10万円だったものが、「来年からは更新で5,000円上がります」というようなことがよくあったりしますが、この場合はほとんど問題になることはありません。

 ですから、本来であれば住宅ローンの金利が0.1%上昇しても微々たるものなのですが、一般の方の危機感を煽り、経済の足を引っ張るような、メディアによるインパクト重視の書き方・報じ方はいかがなものかと思いますね。

 ──たしかにその通りです。一方で、マンションの需要については、まだ落ち込むことはないのでしょうか。

 諸藤 それも金利の動向次第だと思いますね。残念ながら、決して楽観視できる状況ではありません。

 ──原材料費や工事費の高騰にともない、マンションの販売価格上昇も懸念されるところです。場所にもよるでしょうが、御社の「グランフォーレ」ブランドは現在、坪単価いくらぐらいで出されていますか。

 諸藤 もはや坪単価200万円以下では出せませんね。22年7月に完売したグランフォーレ大橋駅前レジデンスで、坪単価240万円くらいです。ですから今は、3LDKで5,000万円くらいの販売価格になりますね。マンションの販売価格としては、もう限界に近いところにきていると思いますよ。

 ──施工を担当するゼネコンの協力は、今のところ得られているのでしょうか。

 諸藤 幸いなことに、おかげさまでゼネコン各社さまにご協力いただけています。ただ、ゼネコン各社さまの姿勢にもだいぶ変化が出てきたように感じます。これまでマンション施工を手がけていなかったところも、「何かないですか。マンションもOKになりましたので見積もりさせてください」といってくるケースも増えましたね。

(つづく)

【文・構成:坂田 憲治】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:諸藤 敏一
所在地:福岡市中央区赤坂1-15-30
設 立:1992年8月 
資本金:15億6,245万円
売上高:(22/1連結)112億8,889万円
URL:https://www.kose-re.jp


<プロフィール>
諸藤 敏一
(もろふじ・としかず)
1955年6月、福岡市生まれ。九州共立大学経済学部卒業。(株)すまい取締役を経て、92年8月に(株)コーセーを創業。2005年1月に(株)コーセーアールイーに商号変更した。07年に福岡証券取引場に上場し、12年4月の大証JASDAQ(市場統合にともない13年7月に東証JASDAQ)、16年9月の東証二部を経て、17年10月に東証一部(22年4月に東証スタンダードへ移行)上場をはたす。社外では(一社)九州住宅産業協会の理事長も務め、業界の発展に貢献した功績から14年には「春の黄綬褒章」を受章。現在も福岡のデベロッパー業界を牽引し続けている。

(後)

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