銀行大リストラ時代 中小企業は貸し渋りに備えよ!(後)
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一つの妖怪が日本にあらわれている。フィンテックという妖怪が-。マルクスの「共産党宣言」の書き出しをもじれば、こうなる。フィンテックとは「finance(金融)」と「technology(技術)」を合わせた造語。世界的に普及したスマートフォンのインフラやビックデータ、人工知能(AI)などの最新技術を駆使した金融サービスを指す。フィンテックがメガバンクの大リストラを引き起こした。この動きは今後、地銀・信金・信組に波及する。中小企業向け融資はどう変わるか。
銀行業務のIT化は貸し渋りという副作用をもたらす
低金利とフィンテックの大波は、地銀・信金・信組をも襲う。中小企業に対する融資姿勢が変わる。融資判断はAI(人工知能)が対応するようになるからだ。
従来の融資審査は、融資の申込者の財務・決算情報や過去にどういった取引をしていたか、担保の有無などを基に行われた。フィンテックを活用した審査では、スコアリング(信用力の数値化)もAIで自動化される。融資の申し込みがあった際に、これまでの取引状況のデータなどの膨大な数の行動記録から申込者の信用度を算出し、AIが融資可能を判断する仕組みになっている。
実績に乏しく新規に事業を始めようとする事業者や、業績が低迷している中小零細事業者は、AI審査ではねられて、借り入れができなくなる。銀行業務のIT化は、貸し渋りという副作用をもたらす。米国では、フィンテック企業が、貸し渋りにあう中小零細企業の救世主として登場してきた。銀行の脅威はIT企業だ
NHKの報道情報番組『クローズアップ現代』は16年2月28日、「ITが変える“お金の未来”~フィンテック革命の衝撃~」を放送した。
「もう銀行はいらない!」という刺激的なタイトルで、米国で起きたフィンテック革命をレポートした。きっかけは2008年秋のリーマンショック。経営が悪化した大手金融機関が貸し渋り、低所得者や中小企業は融資を受けにくくなった。
これをチャンスと捉えたIT企業が、新たな発想で金融サービスに乗り出した。番組では、フィンテックを活用して自転車店を開いたジミー・スタンドリーさんを取り上げた。それまでオリジナルの自転車をネットで販売していたが、事業を拡大するため実際の店を開こうと、銀行に融資を申し込んだ。〈「10以上の銀行に融資を掛け合いました。そのうちいくつの銀行から『融資できる可能性がある』と言われ、苦労して手続きを進めたのですが、結局、融資はしてもらえませんでした」〉
スタンドリーさんがたどりついたのが、あるサイト。借りたい金額のほか、事業内容・売り上げなど必要な情報を入力し、融資を申請した。すると、銀行より金利は高いものの、およそ3,000万円の融資を受けることができた。サイトを運営する会社は、資金を借りたい人と貸したい人をインターネットで仲介する仕組みをつくっていた。
日本ではフィンテックといっても、まだできることは限られているが、米国では、これまで銀行の聖域であった預金、決済、融資といった業務をフィンテック企業が提供している。
「銀行の脅威はIT企業だ」。米金融界ではAIやビッグデータ、クラウドなど最先端の技術を開発、提供するアマゾン、フェイスブック、グーグルを3大脅威として挙げている。
日本でも早晩、フィンテック企業から融資を得られる時代がやってくる。
大リストラがもたらす貸し渋り時代を迎える。中小企業は貸し渋りに備えろ!(了)
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