ジャベリンを抱えて静かに話す~アザーニュース(後)
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DEVNET JAPAN 顧問
前駐ノルウェー日本国大使
田内 正宏Net I・B-Newsでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONALのニュースを紹介している。DEVNET(本部:日本)はECOSOC(国連経済社会理事会)認証カテゴリー1に位置付けられている(一社)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約1万4,000名に英語など10言語でニュースを配信している。今回は2022年12月28日掲載の記事を紹介する。
これに先立ち、バイデン政権はロシアが4州併合の動きを見せていた22年9月28日、ウクライナに対する11億ドル(約1,590億円)の追加軍事支援を発表した。この軍事支援では最終的に、ウクライナに対し多用途レーダー、対無人航空機システム、兵器をけん引する戦術車両、その他の装備が追加供与される。また、高機動ロケット砲システムハイマースを18基調達し、ウクライナが現在使用し、とくにロシアの弾薬庫や補給線への攻撃で優れた戦果をもたらしている16基を補完する計画である。しかし、米国防当局の高官によると、ロケット砲システムとその弾薬を調達しこれらがウクライナ軍に届くまでには「数年」かかりそうだという。この高官は、今回の支援パッケージは「長期的にウクライナを支援するという米国のコミットメントを強調するものだ」と述べている 。
ただし、ハイマースのロケット弾の最大射程は15km~100kmである。射程300km超のATACMS(エイタクムス)地対地ミサイルも発射可能であるが、アメリカのバイデン大統領はATACMSのウクライナへの供与に関しては本土への攻撃を警戒するプーチン大統領を過度に刺激してしまうとの懸念から供与の指示を出していない 。
これまで民主主義諸国は、ウクライナが負けないように、そしてロシアを勝たせないように、さらにはロシアが核兵器を使用しないように、ウクライナへの支援を続けてきた。ウクライナ国内にはロシア側が何の制約もなく自分たちを攻撃してくるのに、なぜ西側はウクライナの防戦に制約を課そうとするのか疑問視する声もあがっている。「西側諸国はウクライナに勝ってはもらいたいが、勝ちすぎるのも困る、とその勝ち方を微調整しているかのようだ」という者もいる 。
今後ウクライナ戦争は、どのように進み、どのように終わるのか? ストルテンベルグ事務総長は、ロシアが来年初めの新たな攻勢に備えて戦闘をいったん中断させ戦力を再編成しようとしていると見ているため、同盟国に武器をウクライナに送り続け 、来春のロシアの攻勢に備えるように促した。
ストルテンベルグ事務総長は、「ロシアはウクライナの主権と完全な領土を尊重する交渉に参加する兆候を示していない。ウクライナがロシアと交渉する条件は現在存在しない。」としつつ、「交渉を開始し、条件に同意する適切な時期を決定するのはウクライナ人だ。」と付け加えた。そして「ほとんどの戦争、そしておそらくこの戦争も交渉のテーブルで終わる」「独立した主権国家がほかの国に攻撃されて侵略者が勝つという結果で終わることがないようにすることが重要。侵略者が勝つという結果で終わると、世界中の権威主義的指導者とプーチン大統領に、彼らが国際法に違反したとき、彼らがほかの国を侵略するとき、彼らは彼らが望むことを達成できるという非常に悪いメッセージを送ることになる。そのようなことがないようにNATOはウクライナに武器を送り続け、交渉上の立場を強くすることが重要である」と強調した。そして、第一に侵略戦争を開始したプーチン大統領がこの戦争を終わらせる、第二にウクライナが独立した主権国家として戦争に勝ち、交渉により解決する条件づくりを支援する必要があるとしている 。
そうした戦争の終わり方をしたときに、プーチン大統領は、NATO側の政治的解決策を見つける努力を無視して侵略戦争におよんだものであるから、NATOとロシアがある種のよい関係または正常な関係に戻ることはあり得ない。ロシアとの困難な関係は長く続くものと考えこれに備える必要がある。
これまでロシアの核兵器使用はあまり現実的な危機と受け止める必要はないとされてきたが、ウクライナ東部をロシアが併合し、しかもウクライナの攻勢に押されて後退を始めるなかで、ロシアの存立が危機に直面した場合に核兵器の使用の可能性がないとは断言できない。ただ、プーチン大統領もウクライナへの核攻撃が、その必然的な帰結としてアメリカの参戦を招くということは当然認識していることであって、わざわざ言葉にするよりは、「ジャベリンを抱えて静かに話をする」米国の選択は間違いではない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は12月21日にワシントンを訪問し、ホワイトハウスで米国のバイデン大統領と会談した。バイデン大統領は、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」1基を含む総額18億5,000万ドル(約2,400億円)規模の追加軍事支援の供与を伝えた。バイデン政権は米露間の緊張を高める可能性があるとしてパトリオットの供与に難色を示してきたが、ロシアによるエネルギー・水道設備など重要インフラ施設へのミサイル攻撃が相次ぐなか、ウクライナの防空能力の強化を急ぐ必要があると判断した。しかし、記者会見では、やはり、「防衛のための武器で戦争をエスカレートさせるものではない。」と強調した。同大統領の「ジャベリンを抱えて静かに話す」戦略は続く。
(了)
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